マグネシウムは現代人の多くに不足しているミネラルです。
それは現代人に不足しがちなある食品群にマグネシウムが含まれているからです。
マグネシウムは体内では補酵素として働くので、その活躍ぶりは地味ですが、必須ミネラルと言っていい程、大事な働きがあります。
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総論
マグネシウムは300種類以上の酵素の補酵素として、その活性化に関わっています。
エネルギー代謝で必要な多くの酵素でも、その大部分でマグネシウムが補酵素として関与しています。
マグネシウムは骨や歯の形成並びに多くの体内の酵素反応やエネルギー産生に寄与しています。生体内には25gのマグネシウムが存在し、その50~60%は骨に存在しています。
血液中のマグネシウム濃度は、1.8~2.3㎎/㎗に維持されており、マグネシウムが欠乏すると、腎臓からのマグネシウム吸収が亢進するとともに、骨からのマグネシウムが遊離して利用されます。
マグネシウムの働き
マグネシウムの主な働きは次の通りとなります。
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エネルギー代謝
マグネシウムは解糖系にて、ブドウ糖がピルビン酸に変化する過程で必要となります。
詳しく見ていくと次のようになります。
グルコース |
この時、マグネシウムは次の段階で働きかけます。
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マグネシウムはこのように糖代謝をサポートします。
糖の代謝が正常に行われると、糖がエネルギーとして利用され、糖尿病や肥満の予防にも繋がります。
但し、糖の代謝を行うにはマグネシウムだけではなく、ビタミンB1の摂取も必要となります。
また、マグネシウムは糖が細胞に取り込まれる時に、インスリンと細胞を結合させて化学反応を引き起こします。
この為、マグネシウムはインスリン感受性を保持します。
マグネシウムはインスリンの分泌を促進することからも、これらの働きが伴って糖尿病や肥満を予防すると言えるのです。
蛋白質の合成、遺伝情報の転写
マグネシウムは蛋白質の合成に関与しています。
DNAに格納されている遺伝情報をRNAが読み取ることによってアミノ酸から蛋白質が合成される時に、RNAの一つであるメッセンジャーRNAがDNAから遺伝情報を読み取り、細胞内のリボゾームに付着することによって蛋白質の合成が始まります。
この付着を助けているのがマグネシウムです。
骨形成
マグネシウムは骨の形成に重要な役割を持っています。
骨内ではハイドロキシアパタイトの構成成分として結晶構造の成長を阻害し、骨の弾力性を維持するとともに、カルシウムを骨に定着させる働きがあります。
マグネシウム不足により骨から溶出されると、カルシウムも同様に溶出されてしまい、骨密度低下を起こしてしまいます。
浸透圧維持
マグネシウムは細胞膜内外の浸透圧維持に関わっています。
細胞外ではナトリウム濃度、細胞内ではマグネシウム、カリウム濃度が高くなります。
細胞膜にあるポンプがミネラルを調整することによって細胞膜内外の濃度を維持しています。
また細胞膜のポンプの働きをしているのにATPアーゼという酵素が関わっています。
ATPアーゼはATPを分解して取り出したエネルギーを利用してポンプを動かしており、能動輸送によってミネラルバランスを保っています。この輸送にマグネシウムが関わっています。
マグネシウムは不足するとイオンポンプが働かなくなり、細胞内にカルシウムが溜まってしまい、細胞が収縮してしまいます。
これが血管の平滑筋で起こると、狭心症や心筋梗塞などの虚血疾患を引き起こす原因となってしまいます。その為、カルシウムとマグネシウムは2:1のバランスを保つことが理想とされています。
リラクゼーション
マグネシウムはビタミンB6やナイアシンと協力しながら、セロトニンの生成に関わります。
そしてマグネシウムそのものに神経興奮抑制作用や筋肉の緊張を緩和する働きがあると言われます。
また、良質な睡眠を得るのに役立てており、GABAを維持するとのことです。
このようにマグネシウムは自律神経を整える働きがあります。
自律神経が乱れてしまえば、動機、眩暈、冷や汗、立ち眩み、不眠等の肉体的症状を呈する他に、鬱、怒り、不安等の精神的症状を引き起こしてしまいます。
マグネシウムの摂取によって脳に働きかけ、自律神経が整うことによってこれらの症状を予防すると言えるのです。
更に、中枢神経に働きかけることから、認知症予防にも期待があります。
高血圧、循環器疾患予防
マグネシウムは筋肉の緊張を緩和することから、動脈を弛緩させます。
これによって血圧が上昇することを防ぎます。
この筋肉を収縮する作用は、マグネシウムが持つカルシウム量を調節する作用によって行われます。
筋収縮時に、カルシウムが筋小胞体より放出されます。
これによって筋収縮が行われます。
この時にマグネシウムがカルシウムが放出しすぎないように調整するため、心臓を規則正しく拍動させます。
この働きは筋肉の痙攣を抑制することから、心筋梗塞のリスクを低減させると言えます。
筋収縮
マグネシウムは、筋収縮時に筋小胞体から放出されるカルシウム量を調節する働きがあります。
マグネシウムが不足すると、この調節機能が正常に働かない為、筋肉に緊張感を与えます。
マグネシウムが不足し細胞内のカルシウム濃度が高くなりすぎると、痙攣やまぶたの震え、痺れ、足がつる等の症状が見られるようになります。
便秘の解消
酸化マグネシウムという便秘薬がありますが、マグネシウムは腸管内の便を通りを円滑にさせる働きがあります。
マグネシウムと水分は、便に含まれる水分に関与します。
マグネシウムの摂取量と水分の摂取量が適切であれば、便は適度に軟らかくなり、腸管をスムーズに通り抜けて排泄していきます。
抗アレルギー
マグネシウムにはセラミドの合成を促す働きがあると言われ、これには蛋白質の合成にマグネシウムが関与していると考えられます。
セラミドは肌のバリア機能としての働きを持ち、外部の刺激から皮膚を守ります。
セラミドを産生するには、スフィンゴミリエナーゼの加水分解を促す必要があります。
この時、マグネシウムが利用されます。
マグネシウムは肌のバリア機能を合成して、外部刺激によるアレルギー作用を抑制すると言えるのです。
欠乏症状及び過剰摂取障害
マグネシウムが欠乏すると、吐気、嘔吐、眠気、脱力感、糖尿病、循環器系疾患、高血圧等のな生活習慣病のリスクを上昇させてしまいます。
このほかにも、集中力低下、筋肉痛、痺れ、震顫、こむら返り、痙攣、骨密度低下等の症状が見られることもあります。
マグネシウムは食品以外から摂取した場合はマグネシウムの過剰摂取によって下痢の症状を引き起こします。
注意点
マグネシウムは、カルシウムやリンと拮抗していることから、これらのミネラルを沢山摂り過ぎてしまうと、吸収が阻害されてしまいます。
また、フィチン酸や食物繊維の過剰摂取も吸収を阻害してしまいます。
現代の欧米型の食事にはマグネシウム含有量が少なく、更に加工食品に使用されているリン酸塩によっても吸収を阻害されてしまいます。
精製糖質にはマグネシウムが全く含まれておらず、肉や牛乳にもマグネシウムがあまり含まれていません。
そして欧米型の食事は高蛋白、高脂質であることから、マグネシウムの排泄を促し、マグネシウム不足を起こしやすくなります。
その為、欧米型の食事や加工食品に頼った食生活ではマグネシウム不足になります。
マグネシウムを含む食品及び耐用上限量
マグネシウムは主に全粒穀物、大豆をはじめとする豆類、大豆製品、魚介類、海藻類、種実類に多く含まれます。
海藻類の中では特にあおさに含まれ、種実類の中では南瓜の種、ひまわりの種、ブラジルナッツに多く含まれています。
1日あたりの耐用上限量は350㎎とされています。
マグネシウムは食品からだけでなく、皮膚からも摂り入れることも出来ます。
入浴剤として用いることにより、マグネシウムによる効能を期待出来るでしょう。
まとめ
マグネシウムの働きについて最後にまとめます。
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便秘薬としてのイメージが強いマグネシウムですが、エネルギー代謝に大きく関わるミネラルであり、骨を丈夫にするために欠かせないミネラルです。
ストレス社会にも欠かせないミネラルなので、マグネシウムを含む大豆製品、魚介類、海藻類、種実類を普段の食事から摂るように心がけましょう。