女性の痩せ願望が騒がれてから何十年と経ちますが、特に若い女性にはBMIが18.5未満の方がかなり見られます。
妊婦の中には「小さく生んで大きく育てる」ということが流行っており、妊娠中も痩せ体型を維持しようとしている人も少なくありません。
生活習慣病で肥満になっていることも健康に良くありませんが、極端なダイエットも悲惨な結末を迎えます。
Table of Contents
痩せすぎは社会問題となっている
日本人の20代女性の痩せすぎは約2割との統計が厚生労働省から発表されています。
また、現在の20代女性の栄養状態は終戦直後より悪いことが、国民健康栄調査によって明らかにされています。
日本栄養士会でのSDGsの取り組みにおいても、20代から30代の若い女性の痩せについて取り上げています。
2018年に行われた国立青少年教育振興機構による調査では、日本、韓国、中国、アメリカを対象に自身の体型に対する自己肯定感についての調査を行いました。
調査結果では日本人女子高生の体重はこの四か国の中で最も痩せており、7割が標準体重に収まっているにも関わらず、自身の体型への満足度は四か国の中で一番低いとのことでした
この日本人女子高生の標準体重に収まっている子たちの約半数が自分のことを太っている、少し太っていると認識していたのです。
低栄養状態
低栄養の問題は高齢者の問題ばかりではありません。
無理なダイエットをしている若い女性にとっても深刻な問題です。
本来若者が低栄養状態に陥ることはあってはならないことなのです。
BMIの正常値は18.5~25までの間が正常値とされています。
ただ、これには個人差があり、正常範囲を超えているものの体脂肪率が少ないケースもあれば、体脂肪率が多くてBMIが正常範囲というケースもある為、BMIが全てというわけではありません。
若い女性の場合、このBMIが18.5に届いていなく、正常範囲内の値になると「太っている」と悲観します。
実を言うと彼女たちの食生活は、かなり意味不摂生です。
|
確かにこれだけ量を減らせば低カロリーですが、摂れるものは炭水化物と脂質しかありません。
中にはお米は太るからといって米を一切食べず、代わりにパンやお菓子で済ましています。
これでは自分の身を滅ぼすだけです。
当然、これでは低栄養状態を起こしてしまい、次のような症状を呈してしまいます。
|
生殖器に悪影響
無理なダイエットは無月経を引き起こします。
極端な体重減少により、視床下部のホルモン分泌が正常に行われなくなると、卵胞の発育に影響を及ぼします。
無月経が続くとエストロゲンの分泌量が低下します。
エストロゲンは女性の身体をあらゆる面から守ってくれるホルモンです。
閉経期に女性が身体の不調を訴えるのは、エストロゲンが減少するからです。
イソフラボンに女性ホルモン様作用があると言われるのは、エストロゲン様作用があるからです。
イソフラボンというと、美容やダイエットにとらわれがちですが、エストロゲンの働きはこの他にも、骨密度を維持したり、生活習慣病から身体を守る働きもあるのです。
つまり、無月経は女性の健康面に支障をきたしてしまいます。
そして特に若い10代の場合は子宮が未発達であり、若くして無月経になると一生出産が出来ない身体を作ってしまいます。
無月経は強いストレスによっても引き起こされます。
無理なダイエットというのは、それだけ身体にストレスを与えてしまっているのです。
子供の肥満
子供を「小さく生みたい」ばかりに妊婦が無理なダイエットをしたり、生まれてきた乳児の体重が低体重(2500g未満)の場合、子供は太りやすいと言われます。
そして、子供が低体重で生まれる原因は、母親の無理なダイエットや妊娠中の体重増加不足があります。
しかし、小さく生まれた子供は脂肪をため込みやすい体質となる上に、生活習慣病に罹りやすくなります。
「小さく産んで大きく育てる」…とは言っても、こんな意味で大きく育ってしまっては本末転倒ですよね。。。
要介護状態へ
無理なダイエットで尚且つ食事が偏っていれば、美容や健康に悪いだけではなく、筋力低下を招きます。
高齢者のサルコペニアフレイルが騒がれている原因には、加齢に伴う筋肉量の低下があります。
筋肉量の低下は、無理なダイエットを行っていて、尚且つ栄養バランスが摂れていない食事を摂ってる若者にとっても他人事ではありません。
肉は太るから食べない…米は太るから食べない…でも、お菓子は食べる…
肉の大量摂取は推奨出来ませんが、蛋白質の摂取不足は体脂肪率を増加させてしまいます。
蛋白質も摂りすぎは良くありませんが、三大栄養素の一つである蛋白質は身体のあらゆる組織を作ることに欠かせない栄養素です。
蛋白質不足は体脂肪率上昇だけではなく、肌荒れや髪のパサつき、爪がもろくなるといった美容面でも支障をきたしてしまいます。
但し、これは蛋白質を摂るだけではなく、蛋白質と一緒にビタミンやミネラルも摂り、炭水化物や脂質は良質なものを摂った上で、美容面や健康面を発揮するのです。
無理なダイエットを行っていれば、必要な栄養が充足されないため、筋肉も付きにくくなります。
筋肉量が少ないと確かに脚は細くなります。
脚はセルライトで固まってしまっても良くありませんが、脚が細すぎることは筋肉量の低下を示している指標となります。
もし、ふくらはぎの太さが30㎝未満の細さになっていたら黄信号です。
そして筋肉量の減少は局所的に起こるものではなく、全身に及び、全身の身体機能に影響を及ぼします。
つまり、脚だけではなく、腰や腕、喉など身体のあらゆるところが筋肉量の低下を起こします。
筋肉量が減ると腰痛を起こしやすくなります。
筋力も低下すると、身体を動かすことが億劫になってきます。
身体を動かさない、食べない…これを繰り返すごとに更に筋肉量が低下してしまい、やがては自力で生活を送れなくなってしまいます。
その結果、介護を要する状態に陥るのです。
高度肥満症
あれだけダイエットしているのに高度肥満症って何事?と思うかもしれません。
無理なダイエットは自ら「バナナ型肥満」の体質を作っています。
バナナ型肥満の厄介なところは「一度太ると痩せるまでが大変なこと」です。
バナナ型肥満も無理なダイエットも「筋肉量が少なく、体脂肪率が高い」という欠点があります。
周囲と同じように運動をしているのに、基礎代謝が悪く脂肪燃焼率も悪いので、ダイエットの効率が落ちてしまいます。
更に、身体は贅肉で重くなっているのに、元々筋力が弱いので、身体を動かすことが人一倍億劫となります。
このように脂肪燃焼率が低下している以外にも、無理なダイエットによって飢餓状態に陥ります。
飢餓状態に陥ると身体は生命を維持するために脂肪をため込もうとします。
その吸収率は10倍と言われています。
食事を抜いてまでもダイエットを頑張ってきたのに、その結果が周囲を驚愕させるような肥満体型を作ってしまっては、水の泡としか言えません。
免疫力低下
無理なダイエットによる栄養不足は、粘膜の生成となる栄養成分の摂取不足を引き起こします。
摂取エネルギー量も少ない為、万が一感染症にかかっても、感染源と戦う力も脆弱になります。
また、感染によって炎症を起こす場合があり、炎症を起こせば身体の栄養状態も悪化します。
口から御飯が食べられなくなることも
摂食嚥下障害の原因の一つに「全身の筋力低下」があります。
先述しましたように、筋力が低下することは局所的なものではなく、全身に及ぶものです。
若くて健康なうちは、食事を飲み込む動作を当たり前のように行います。
しかし、身体に麻痺を起こしたり、年齢を重ねて筋肉が衰えると、食物や水分が上手く飲み込めなくなります。
食物や水分を飲み込む時、口腔内から胃まで食物を送り出す動きは一瞬にして行われます。
この一瞬の動きは筋力があって出来るものです。
しかし、筋力が衰えてしまうと、この動きが鈍くなってしまいます。
食物や水分を送り込む時に、一度気道を塞いで食道に送り込まれる行為が行われますが、筋力が弱いとこの動きが素早く出来なくなる為、食物や水分が誤って肺に入ってしまうことがあります。
これは食事形態を工夫して経口摂取を維持出来るケースもありますが、あまりにも誤嚥が酷いと口から食事を摂ることは寧ろ危険を伴うこととなります。
誤嚥して食物が肺に入ってしまい、咳反射で排出することが出来ないと、その食物は肺にとどまったまま腐敗してしまい、肺炎に至ってしまうことがあります。
筋力の著しい低下も肺炎も、進行が著しくなると口から食事を食べられなくなり、非経口的な方法ではない限り、栄養補給することが困難となります。
最悪な場合は寝たきりとなり、身体に管を入れたり、場合によっては注射を刺した状態で、一日中天井を向いただけの生活を送るというこの上ない不幸な生活を送ることとなってしまいます。
まとめ
「スリムボディーを目指したい」
この願望を誤って達成したその末路は悲惨なものでしかありません。
正しくダイエットをするのなら自身の身の丈にあった栄養量の範囲で五大栄養素が摂れる栄養バランスのとれた食事を心がけ、適度に身体を動かすことです。
皮下脂肪は本来身体を守るものであり、皮下脂肪によって骨折による怪我を防いだり、保温という働きによってホルモンバランスを整える役割があります。
同じ痩せ方でも、筋肉がなくてひょろひょろした痩せ方と、引き締まった痩せ方とでは後者の方が健康的で且つ魅力的です。
無理なダイエットは見た目の問題だけではなく、それ以上に健康面で悪影響を及ぼし、その人の人生をも台無しにしてしまうことさえあります。