カルシウムはアルカリ土類金属の一つです。
カルシウムは人体内に最も多く存在するミネラルであり、体重の1~2%を占め、その99%は骨及び歯に存在し、残りの約1%は血液や組織液、細胞に含まれています。
血液中のカルシウム濃度は比較的狭い範囲に保たれており、濃度が低下すると副甲状腺ホルモンが増加し、主に骨からカルシウムが溶け出し、元の濃度に戻ります。
副甲状腺ホルモンが高い状態が続くと、骨からカルシウムの溶出が大きくなり、骨粗鬆症を引き起こすことになります。
骨は、骨からのカルシウム等の溶出と骨へのカルシウムの沈着を常に繰り返しています。成長期には骨形成が骨吸収を上回り、骨量が増加します。
摂取されたカルシウムは主に小腸上部で能動輸送により吸収されます。
その吸収率は成人で25~30%程度と低いのです。カルシウムの吸収は年齢や妊娠・授乳、その他の食品成分等によって影響されます。
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カルシウムは最も不足しているミネラル
カルシウムは、日本人に最も不足しているミネラルと言われ、厚生労働省が定めている摂取基準に一度も到達したことがないほど問題視されています。
ここまで不足する理由は、日本人の食生活の変化や、昔と比べ得て食材に含まれるカルシウム量が低下していることが挙げられます。
カルシウムは常に調整されている
カルシウムはビタミンDによって吸収が促され、吸収されたカルシウムは骨への蓄積と腎臓からの尿中排泄の経路によって体内のカルシウム量が調節されています。
カルシウムの栄養状態を観察するには、摂取量、腸管からの吸収率、骨の吸収と形成のバランス、尿中排泄等を考慮する必要があります。
カルシウムの働き
カルシウムの働きと言えば、言わずも知れた骨を丈夫にするとうものが浮かびますが、不足しやすいカルシウムの働きには主に次のものが挙げられます。
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骨の栄養
丈夫な骨を作るためには、骨の成分となるものをしっかり補う必要があるのでコラーゲン、マグネシウムと合わせて摂ると良いでしょう。
カルシウムとマグネシウムはバランスよく摂ることが大切です。
マグネシウムはカルシウムとともに骨を作る働きがある為です。
カルシウムとマグネシウムの比は、2~3:1が良いとされています。
コラーゲンは骨の枠組みを作り、しなやかさを保つため、カルシウムを摂る時に補うと良いとされています。
その他カルシウムの働き
カルシウムはこの他に筋肉の収縮コントロールや、神経伝達物質の放出による興奮や緊張の緩和、血液凝固や高血圧の予防、怒りの鎮静、大腸癌リスク低下など、様々な働きがあると言われます。
筋肉収縮コントロール
細胞は静的状態に置かれていると細胞内外の電位が安定していますが、刺激によって細胞内外の電位が変化し、あらゆる細胞に情報が伝達します。
カルシウムは細胞内外の浸透圧の調整に関わることから、神経伝達という働きに関与します。
筋肉には二種類の筋原線維「アクチン」と「ミオシン」があり、脳から神経が伝達されることによって収縮されます。
カルシウムは筋収縮時にアクチンに存在するトロポニン層と結合するのに必要とされます。
興奮や緊張の緩和
カルシウムにはイライラや興奮を抑制すると言われます。
神経伝達を放出する時、カルシウムが細胞内メッセンジャーとしての役割を担っているからです。
この神経伝達経路には複数の経路があり、活性化が同時多発的に行われます。
カルシウムが不足すると、神経伝達が正常に行われなくなることから興奮の抑制が困難となります。
そしてカルシウムには酸性になった身体をアルカリに傾ける働きがあります。
身体を何故アルカリに傾けるのかというと、カルシウムはやや強アルカリという性質があるからです。
身体はストレスにさらされたり、欧米化された食事が習慣となっていえると身体は酸性に傾きます。
現代人のカルシウム不足はストレス社会という側面から見ても深刻なものです。
また、神経が興奮すると脱分極が起こります。
この時、ナトリウムがナトリウムチャネルを通って細胞内に入ります。
ナトリウムチャネルは周りにカルシウムが多く存在すると、ナトリウムを通りにくするという性質があります。
一方、血中カルシウム濃度が高い時は脱分極が起こりにくくなります。
カルシウムによる脱分極を起こしにくくするメカニズムが、ストレスを緩和させると言えるのです。
血液凝固、高血圧予防
血中カルシウム濃度は一定に保たれています。
血液中のカルシウム濃度が下がると、副甲状腺が働き、骨吸収によって骨のカルシウムが血液の濃度を保つことに利用されます。
この現象をカルシウムパラドックスと言います。
このカルシウムパラドックスは血中カルシウム濃度を保つための恒常性の一つであり、生命を維持するための大切な働きを担っているのですが、カルシウムが不足すると、次々と骨吸収が促進します。
血中カルシウム濃度が増えると血管壁にカルシウムが取り込まれ、血管が硬くなります。
これによって動脈が硬化し、高血圧をはじめ、循環器疾患のリスクも高まります。
臓器に沈着すれば腎結石や胆石症等、臓器に悪影響を及ぼし、骨に沈着すれば狭窄を起こして神経を圧迫してしまいます。
カルシウムはナトリウムの排泄を促すという側面からも、血圧を正常に調整します。
カルシウムはマグネシウムやカリウム同様に電解質の均衡を図っています。
カルシウムはナトリウム、カリウム、マグネシウム同様に細胞内外の浸透圧の維持に関与していることから正常血圧の維持にも関与し、興奮抑制作用によっても血圧を調整していると言えるでしょう。
吸収の促進と阻害
カルシウムの吸収を促進するものはカゼインホスホペプチド、乳糖、適度な蛋白質、難消化性オリゴ糖です。
吸収を阻害するものはシュウ酸、フィチン酸、過剰な蛋白質・脂質・リン、塩分、カフェインです。また喫煙によってもカルシウムの吸収が阻害されます。
リンとの関係
リンはカルシウムとともに骨を作る成分ですが、一緒に摂る事によってカルシウムの吸収を妨げます。
リンは肉や魚などの食品に含まれていますので食事から十分補うことが可能です。加工食品にも含まれている為、最近ではリンの摂取が過剰傾向にあります。
丈夫な骨を作るには?
骨を丈夫にするにはカルシウムを摂るだけではなく、他の栄養素と上手く組み合わせるとともに、適度な運動によって骨に負担をかけることが必要になります。
成長期には、骨の長さ及び強さが急激に成長します。より丈夫な骨をつくるためには、食事・運動のほかに十分な睡眠をとることも大切です。
骨を成長させ、身体を育てる成長ホルモンは睡眠中に分泌されるのです。
欠乏症状及び過剰摂取障害
カルシウムは欠乏すると、骨や歯が弱くなり、骨粗鬆症、高血圧、動脈硬化等を招くことがあります。幼児では骨の発育障害が起こり、成長が悪くなります。
また、神経や筋肉の興奮が始まり、テタニー(筋肉の痙攣)やてんかん(全身の痙攣)が起こります。
過剰摂取症状には高カルシウム血症、尿路結石が挙げられます。
高カルシウム血症を起こすと、悪心、嘔吐、中枢神経障害の症状を呈します。
カルシウムを多く含む食品
カルシウムを多く含む食品には牛乳やヨーグルト、チーズ等の乳製品をはじめ、小魚類、桜エビ、大豆製品、海藻類、ナッツ類、パセリ、モロヘイヤ、大根の葉、しそ、青梗菜等があります。
善玉カルシウムと悪玉カルシウム
カルシウムはただ単に沢山摂ればいいものではありません。
善玉カルシウムは風化貝カルシウムとも呼ばれ、骨の栄養として働くカルシウムです。
一方、悪玉カルシウムは骨にならないカルシウムです。
善玉カルシウムを含む食品には、豆類や小魚類、緑色の野菜、種実類に含まれているものが該当します。
悪玉カルシウムは、卵殻カルシウムといった骨や卵の殻、貝殻等から化学的に合成されたものや体内で再利用されたものが該当します。
カルシウムパラドックスの原因となるのが悪玉カルシウムの方です。
血中カルシウム濃度が低下する原因には肉や油っこいもの、白砂糖の過剰摂取が挙げられます。
まとめ
カルシウムの働きについてまとめます。
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カルシウム不足が深刻なこの頃ですが、カルシウムは魚介類、豆類、緑色の野菜、種実類といった自然なものから善玉カルシウムを摂りましょう。
カルシウムは量も大事ですが、マグネシウムやカリウムとのミネラルバランスを摂ることで、全身の健康にもつながります。