梅干は漬物同様に塩分が多く、心臓や血圧に悪いイメージが強いです。
「梅干は血圧を上げることを抑制する働きがある」というのは本当です。
それには梅干に血圧降下作用のある成分が含まれているからです。
梅干には独自の成分が数多く含まれており、様々なメリットをもたらします。
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梅の分類
梅はバラ科サクラ属の落葉高木であり、びわやもも、杏子等と同じ仲間に分類されます。
梅は未熟な青い実を梅干しとして加工して作られますが、元々青い実は有毒であり、種子同様に青酸配糖体のアミグダリンやプルナシンが含まれ、これらが加水分解されるとシアン化水素を発生するから毒性があると言われます。
青い実はアルコールや塩分、天日干しによって酵素が失活することにより、毒性が低下する為、食用として用いられています。
梅干の歴史
梅は中国の長江中流や湖北省の山岳部、四川省が原産と言われていますが、台湾や日本の九州地方との説もあるそうです。
日本に持ち込まれたのは奈良時代と言われています。当時はお菓子として食されていたそうですが、平安時代になると中国から塩漬けにされた梅が入ることにより、そこから梅干しを食べる文化が始まったとされています。
鎌倉時代に入ると梅干しは縁起物と位置付けられるようになります。江戸時代になると庶民の間にも浸透されるようになりました。明治時代には梅は薬としても利用されるようになり、伝染病患者に与えていたと言われます。
梅干の栄養と効能
梅干しにはクエン酸等の有機酸をはじめ、鉄分、アミグダリン、ムメフラール、バニリン、オレアノール酸、シリンガレシノール、エポキシオニレシノール、リグナン等が含まれます。
梅干は無発酵漬物ですが、梅干ならではの期待出来る効能が数多くあります。
その効能は以下の通りです。
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身体をアルカリに傾ける
梅干しには身体をアルカリ性に傾ける働きがあります。
身体が酸性に傾く原因として、肉類や脂っこいものや糖質類等を食べた後に血液が酸性に傾きます。
よくステーキやハンバーグを食べに行くと、食後に梅干しが出されるのは、酸性に傾いた身体をアルカリ性にする為に出されているからです。
身体が酸性に傾くと頭痛や疲労感、倦怠感、思考力低下、低血圧等の症状を呈します。
また、ストレスによって活性酸素が発生しやすくなります。
かといって身体がアルカリ性に傾き過ぎてもしびれや痙攣、吐き気等の症状を起こすことがあります。
現代人には欧米化した食事を摂っている人も多く、多くのストレスにさらされ、更に睡眠不足や喫煙、アルコールの摂取がこれらを助長している為、血液が汚れやすく、身体が酸性に傾きやすく、常に疲労している状態です。
一方アルカリ性食品と呼ばれるものは野菜や海藻類、大豆製品、きのこ類、果物が該当します。
これらの食品が不足すると酸性に傾きやすく、ビタミンやミネラルの不足を招きやすくなります。
この身体をアルカリ性に傾ける働きはクエン酸やアミグダリンによるものと言われます。
殺菌作用、感染症予防
梅干しは殺菌作用があると言われ、お弁当やおにぎりによく使用されるのは、黄色ブドウ球菌や大腸菌による食中毒や腐敗を防止することを目的として用いられるからです。
梅干しには「シリンガレシノール」という抗酸化成分があり、この成分によってピロリ菌の運動を阻害することが知られています。
梅干しには「エポキシオニレシノール」という抗酸化成分の含まれ、こちらの成分はインフルエンザ予防に良いことが知られています。
梅干しには食物繊維も含まれている上に、腸内環境を整える働きもあり、強い殺菌力もある為、免疫力を付けて、風邪等の感染症予防に効果があることが言えます。
食物繊維の腸内環境改善効果に加え、クエン酸には下痢は便秘の解消効果があり、更に腸内環境改善に期待があります。
癌予防
梅干しには上記のように抗酸化作用がある上、「梅リグナン」という抗酸化成分があり、活性酸素を減らす働きがあります。抗酸化作用には癌予防効果があると言われます。
ピロリ菌の運動を阻害すると言われる「シリンガレシノール」は胃癌予防に期待があると言われています。
梅等のバラ科の植物にはアミグダリンが含まれ、アミグダリンはβグルコシダーゼという酵素によって分解されることによって癌細胞を死滅される一方、正常な細胞を活性化させると言われます。
アミグダリンはベンツアルデヒドによって酸化され、無害な安息香酸に変換され、これによって鎮痛効果をもたらします。
アミグダリンはこのような効能があることから「天然の抗癌剤」と呼ばれています。
梅干しは塩蔵によってアミグダリンの毒性が抑えられており、常識的な量を摂る限り、中毒の心配は殆どないと思われます。
老化防止
梅干しを口にした時に分泌される唾液には「バロリン」という若返りホルモンが分泌されます。
梅干しには「梅リグナン」という抗酸化成分があり、この作用によって紫外線から肌を守る働きもある為、梅干しには若さを保つ効能があることが言えます。
生活習慣病予防
梅干しは塩分が多いから血圧を上げる身体に悪い食品に見られがちです。
しかし、梅干しに含まれるクエン酸には「アンギオテンシンⅡ」という血管を収縮させる血圧上昇ホルモンの働きを8~9割抑える為、寧ろ高血圧に良いと言われています。
梅干しに含まれるバニリンには脂肪燃焼を促す働きがあると言われています。
梅干しに含まれる「オレアノール酸」が血糖値を上げる酵素である「αグルコシダーゼ」の働きを阻害すると言われます。
梅干しには抗酸化作用があることから、血液中のコレステロールの酸化を抑制することによって、酸化したコレステロールや中性脂肪によって血管が傷つくことを防ぐと言われます。
血管が傷つくと、傷口にアテロームが形成され、次第に血流の流れが悪くなり、動脈硬化を起こしてしまい、心臓や脳血管でこの症状が現れると心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性があります。抗酸化作用にはこのような症状から守る働きがあるのです。
梅干しにはこのように、高血圧や心疾患、動脈硬化、脳梗塞、糖尿病、肥満等の生活習慣病予防効果に期待があります。
食欲増進
梅干しには腸を活発にすると言われています。梅干しに含まれているクエン酸や酒石酸、コハク酸、リンゴ酸には胃液の分泌を高め、澱粉の分解を促進する為、食欲を増進する効果があると言われます。
御飯と梅干しの組み合わせは、熱中症予防にも適しており、理にかなっていることが言えます。
また、胃液によって胃の粘膜を保護する為、アルコールによる刺激を緩和し、二日酔いの回復を早めると言われます。
梅干しには鉄分も含まれ、鉄分によっても胃腸を丈夫にすると言われています。
その他梅干の効能
梅干しには「ムメフラール」が含まれ、血流を促進し、冷え性を改善すると言われています。
また、血流促進効果によって、肩こりの症状緩和にも良いとされています。
梅干しには鉄分が含まれていることから、赤血球の材料となり、貧血を予防する働きがあると言われます。
梅干しにはカルシウムの吸収を促す効果もあると言われています。
梅干しには唾液を分泌する働きがあり、クエン酸によって虫歯の原因となるミュータンス球菌の活動を抑制します。
梅干しには食用の他にこめかみに貼りつけることによって頭痛や眩暈の症状を抑えたり、焼いたものを歯に付けることによって歯痛を抑える働きがあると言われます。
注意点及び1日あたりの摂取量
梅干しは高血圧予防に良いと先述しましたが、食べ過ぎはナトリウムの過剰摂取に繋がり、巷で言われるように血圧を上げてしまい、循環器疾患罹患のリスクを上げてしまいます。
また、過剰な塩分摂取は腎機能を悪化させてしまいます。
梅干しの効能を十分に得たいのであれば、1日1粒で十分なのです。
まとめ
最後に梅干に期待する効能についてまとめます。
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あの小さい一粒に健康効果が凝縮されている梅干は身体に様々なメリットをもたらします。
しかし、食べ過ぎれば塩分の過剰摂取による疾患の罹患にも繋がりますので、1日1個までに留めておきましょう。