昆布は和食のだしに欠かせない存在となっています。
出しといえば現在は化学調味料で味付けされたものが主流となっていますが、昆布をはじめとする天然ものから取っただしは人工的なものより風味に深みがあります。
また、天然だしにはナトリウムが殆ど含まれていない為、塩分を抑えながら旨味を付けられるというメリットがあります。
和の出し汁は世界無形文化遺産に登録されている程、価値の大きいものとして位置づけられています。
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昆布の歴史
昆布の起源には諸説がありますが、アイヌ民族が「コンプ」と呼んでいたものであり、一度中国に伝来した後、再び日本に逆輸入されたという説が有力と言われます。
鎌倉時代中期以降、昆布の交易船が北海道の松前と本州の間を盛んに行き交うようになりました。
室町時代に入ると蝦夷地から越前国の敦賀まで船で運ばれ、京都や大阪に広められました。
江戸時代には下関から瀬戸内海からのルートによって大阪まで運ばれ、その後、江戸、九州、沖縄、中国へと広がっていったそうです。
これらのルートを「昆布ロード」と呼び、これらの土地において昆布を用いた料理による日本の食文化が広げられたのです。
昆布の栄養
昆布にはビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンK、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ヨウ素が含まれています。
昆布はミネラル類も豊富ですが、アルギン酸やフコイダン、クロロフィルの他に、フコキサンチン、ラミナリン、グルタミン酸、マントールといった昆布独自の成分も含まれています。
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有害物質の排泄
昆布にはアルギン酸が含まれます。
アルギン酸は水溶性食物繊維と言われますが、不溶性食物繊維としての効能もあります。
不溶性食物繊維は善玉菌の餌となり、水分と一緒に摂ることによって便のかさを増して、腸の蠕動運動を促し、排便を促します。
水溶性食物繊維にも不溶性食物繊維同様に腸内環境改善を図り、短鎖脂肪酸を増やすことによって大腸内のphを弱酸性に傾けて善玉菌を増やします。
水溶性食物繊維とマグネシウムは、便に適度な水分を含ませて便を排泄しやすくします。
昆布にはクロロフィルが含まれ、クロロフィルは強いデトックス作用があると言われます。
クロロフィルは重金属や有害物質の排泄を促す上に、消臭効果までもたらします。
その為、腸内に溜まった老廃物を排泄する働きや排便コントロール効果、腸内環境改善による太りやすい体質の改善や免疫力アップ等の効果に期待があります。
生活習慣病予防
不溶性食物繊維には腸管からの余分な糖の吸収を抑える働きがあります。
糖の吸収が抑えられると血糖値の上昇抑制効果や中性脂肪の蓄積予防に繋がり、糖の吸収阻害により肥満予防効果等、様々な効用が得られることが言えます。
水溶性食物繊維は、腸管からの糖の吸収抑制及び、体内の余分なLDLコレステロールや中性脂肪を排出する働きがある為、生活習慣病予防効果に期待が出来ます。
昆布にはフコキサンチンという昆布独自の成分が含まれています。フコキサンチンとは昆布の褐色の色素成分です。
フコキサンチンには脂肪燃焼効果があると言われています。
昆布には比較的ビタミンB群が含まれていることから、運動時において糖分や体脂肪をエネルギーとして変換させることに役立ち、疲労抑制効果によって有酸素運動を効率的に行うことが可能と言えます。
昆布は海藻類の中でヨウ素が一番多く含まれています。
ヨウ素には基礎代謝亢進作用があることから、脂肪燃焼を促すことによって肥満予防効果があることが言えます。
乾燥した昆布の表面には白い粉状のものがありますが、これはマントールという甘味成分です。
マントールはグルタミンと共に旨味の相乗効果を引き出す上に、糖尿病予防や内臓脂肪の蓄積予防効果があると言われています。
蓄積された内臓脂肪を燃焼することによって体脂肪率が低下し、これによって高血糖や脂質異常症やメタボ等の生活習慣病の改善効果に期待があることが言えます。
グルタミン酸は成長ホルモン分泌促進する働きがあることから、食欲を抑制すると言われます。
そして、昆布そのものが低カロリーで低GI食品です。
昆布にはカリウムが豊富に含まれます。カリウムはナトリウムと共に電解質の均衡を図り、細胞を正常に保つ働きがあります。
カリウムには体内に余分に溜まったナトリウムを排泄する働きがある為、血圧を正常値に調整する働きがあると言われています。このほかにも浮腫み改善効果や血流促進作用に良いとされています。
これらの栄養成分の働きによって昆布は、糖尿病、肥満、脂質異常症、胆石症、脂肪肝、循環器疾患等の予防に役立つと言えます。
癌予防
昆布を含む海草類にはヌルヌル成分であるフコイダンが含まれています。
フコイダンは癌治療効果がある成分として注目されています。
フコイダンにはアポトーシス機能があり、フコイダンが癌細胞に直接接触することによって癌細胞のDNAを破壊して癌細胞を自滅させます。
このアポトーシス機能にはもう一つの経路があり、癌細胞の表面に穴を開けて直接攻撃するものもあります。
ただ、フコイダンの癌治療の有効性は癌の進行度合いや患者様の身体状況や服薬状況によってそれぞれの為、一律に効果があるという保証はありません。
初期のうちなら可能性は完全にないとは言い切れませんが、もっと大切なのは癌や生活習慣病の原因となるような食生活を送らないことと、ストレスケアを行って予防に努めることです。
消化器系疾患予防
昆布にはラミナリンという成分も含まれ、ピロリ菌の減少や大腸の免疫系に働きかける為、胃潰瘍や十二指腸等の消化器系疾患予防に役立ち、胃癌や大腸癌予防に期待があります。
ラミナリンには抗酸化作用があるため、更に癌予防効果を高め、更に老化防止や動脈硬化等の循環器疾患予防に良いとされています。
アルコール代謝
昆布には旨味成分のグルタミン酸が含まれ、和風のだしによく活用されます。
グルタミン酸は腸内環境改善効果や成長ホルモンの分泌促進、アルコールの代謝に関わります。
昆布に含まれるビタミンB1はアセドアルデヒド分解を促進します。
筋蛋白合成
グルタミン酸は成長ホルモン促進作用があることから、BCAAと一緒に摂取すると筋肉の形成や臓器の修復効果が得られると言われます。
筋肉の形成はボディービルダーのように筋肉を沢山付けたいというニーズの他に、脂肪燃焼しやすい体質に改善する、高齢者の筋力低下予防により歩行機能や摂食嚥下機能の維持にも役立ちます。
BCAAは筋蛋白量低下が見られるCOPDや癌、カヘキシアの栄養管理として活用される他に、肝硬変の非代償期にも必要であり、BCAAによる効能を促すために、グルタミン酸の作用が大事であることが言えます。
皮膚や髪を美しくする
グルタミン酸は成長ホルモン分泌促進作用があることから、体組織の修復を促進させることに期待があります。
ヨウ素は、皮膚や髪、爪の健康を維持します。
ビタミンB2は粘膜の生成に関わり、皮膚や髪、爪の健康を維持する役割があります。
亜鉛や葉酸は細胞分裂に関わることから傷の治癒を早め、鉄分はコラーゲンの生成に関わります。
海藻類にはムコ多糖類が含まれており、細胞の周りに水分を蓄えることから、肌の保湿や関節痛の緩和に期待があります。
昆布は皮膚や粘膜、爪等、身体の組織を若返らせることに関与していると言えます。
骨形成
昆布は骨を作る栄養として、カルシウム、マグネシウムが含まれています。
カルシウムは骨や歯の材料となり、マグネシウムはカルシウムを骨に定着される働きがあります。
昆布には、ビタミンKも含まれます。
ビタミンKには骨芽細胞を形成する働きがある為、カルシウムはマグネシウムとともに骨を丈夫にする働きがあります。
その為、骨粗鬆症予防効果や骨折による怪我の治りを早める効果に期待があります。
ヨウ素には成長促進作用があることから、骨の成長をサポートします。
薄毛対策
海草類に含まれているフコイダンには「FGF-7」という髪の成長を助ける働きがある成分があり、毛母細胞に働きかけることによって髪の生成や成長を促す効能があると言われます。
注意点
昆布を摂取する際は、次の点に気を付けましょう。
腎機能低下
昆布にはカリウムが多く含まれていますがカリウムの摂取がデメリットになるケースもあります。
腎機能が低下し、尿からの排泄が困難となると、通常尿中に排泄される筈のカリウムが排泄量低下により体内に蓄積されやすくなります。
血中カリウム濃度が上がり過ぎてしまうと、不整脈を起こし、最悪の場合は心不全を起こして死に至る危険性があります。
その為、腎機能があまり良くない場合は、摂取量を控えると良いでしょう。
ヨウ素の過剰摂取
ヨウ素の過剰摂取は甲状腺機能を正常に働かせなくなくなり、バセドウ病の原因となってしまいます。
特に昆布はヨウ素の含有量が多い為、「切り昆布の煮物」「昆布巻き」のように昆布を多めに使った料理を1日1回に留めておかないと、過剰摂取によって甲状腺機能を低下させるリスクがあります。
薬との相互作用
ワーファリン等の抗血栓薬を服用している場合は薬の効力を弱めてしまう場合があります。
一度に大量摂取することは避け、摂取する場合はほんの少量に留めておきましょう。
まとめ
昆布についてまとめます。
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昆布はミネラル類をはじめ、昆布独自の栄養成分による健康効果に期待があります。
昆布は出しになることから、料理の味を引き立てることにも役立ちます。
但し、ヨウ素の含有量が多い為、摂りすぎには気を付けましょう。