アミノ酸代謝と蛋白質の代謝に関わる「ビタミンB6」の働き

ビタミンB6は三大栄養素の代謝に関わり、特に蛋白質との関係が密接です。

ビタミンB6は腸内細菌によっても作られます。





 

総論

ビタミンB6はピリドキシンとも言われます。

ビタミンB6はアミノ基転移反応、脱炭酸反応、ラセミ化反応などに関与する酵素の補酵素です。ビタミンB6はピリドキサール5-リン酸(PLP)として働いており、免疫系の維持にも重要な役割を果たしています。


(拡大図は上の画像又は青文字をクリック…ビタミンB6活性を持つ主要化合物pdf

 

細胞中に含まれるビタミンB6の多くは、リン酸化体であるピリドキサール5-リン酸(PLP)やピリドキサミン5-リン酸(PMP)として酵素蛋白質と結合した状態で存在しています。

食品を調理・加工する過程及び胃酸環境下では殆どのPLP及びPMPは遊離します。

遊離したPLP及びPMPの殆どは消化管内の酵素であるホスファターゼによって加水分解され、ピリドキサール及びピリドキサミンになった後に吸収されます。

一方、植物の細胞中にはピリドキシン5β-グルコシド(PNG)が存在します。

PNGはそのまま或いは消化管内で加水分解を受け、ピリドキシンとなった後、吸収されます。PNGの相対生体利用率は人間においては50%と見積もられています。

消化過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる食品によっても影響を受けます。

 

ビタミンB6の働き

ビタミンB6には主に次のような働きがあります

  • アミノ酸代謝
  • 肝機能維持
  • 神経伝達物質の合成
  • 心血管疾患のリスク低減
  • 癌予防
  • 免疫力アップ
  • つわりの軽減
  • ホルモンバランスの調整

 

アミノ酸代謝

ビタミンB6は蛋白質を分解してアミノ酸にする酵素と、アミノ酸が他のアミノ酸に組み替える酵素の補酵素としてその働きを助けます

分解されたアミノ酸が人間の身体特有の蛋白質に再合成されるのを手助けし、皮膚や髪、歯等の健康維持に役立っています。


 

脂質代謝

ビタミンB6は脂質の働きをサポートし、肝臓に脂肪が過剰に蓄積されるのを防ぎます

その為、脂肪肝予防効果に期待があると言えます。


 

神経伝達物質の合成

ビタミンB6はセロトニン、ドーパミン、アドレナリン、GABAなどの重要な神経伝達物質の合成に関わっています

この神経伝達物質の合成に関わるのは、ビタミンB6がアミノ酸代謝に関わっているからなのです。

 

ビタミンB6とホモシステイン

ビタミンB6が欠乏すると、それに伴ってホモシステインが低下します。

ホモシステインの低下により心血管病のリスクが高くなると言われており、ビタミンB6の補給によって、予防効果の可能性があると見られています。

ホモシステインは蛋白質の代謝過程で出来るアミノ酸の一種であり、血液中に蓄積することによって動脈硬化を起こす為、心臓血管や脳卒中の危険因子とされています。

ホモシステインは肝臓にてビタミンB6、葉酸、ビタミンB12によってメチオニンに変換され、更に一部はシステインというアミノ酸変換され、一部は尿中に排泄されます。

この中でビタミンB6はアミノ酸代謝を促進する役割があることから、ホモシステインがシステインに変わる際に補助的に働きかけているのです。




 

癌予防

ビタミンB6は、食事から摂取した場合、消化器癌の発生を予防
する可能性があるとされています。

免疫力アップ

ビタミンB6は免疫機能を正常にする働きがあると言われています。

その為、皮膚炎等のアレルギー症状緩和
に期待があります。

蛋白質には抗体を形成する働きがあり、ビタミンB6は蛋白質の代謝に関わることから、アレルギー体質の改善に寄与するのでしょう。

 

つわりの軽減

ビタミンB6はつわりの症状を軽減する働きがあると言われています。

つわりの原因には蛋白質、ビタミンB6の摂取不足です。

蛋白質とビタミンB6が不足するとトリプトファンの合成が正常におこなわれなくなり、つわりの不快な症状を呈してしまいます。

ただ、つわりの時に食べられなくなる食品には個人差があり、ビタミンB6以外の栄養成分も不足しやすくなります。

 

ホルモンバランスの調整

ビタミンB6は月経前症候群(PMS)の症状軽減にも良いと言われています。

排卵期にはるとエストロゲンが放出されることによってアミノ酸代謝が促進され、ビタミンB6が大量に消費されることから、症状を呈すると言われています。

ビタミンB6の摂取によりPMSの症状が軽減されたとの報告があります。

蛋白質がホルモンの代謝調節に関わることから、ビタミンB6もホルモンバランスの調節に関わり、エストロゲンの代謝を整えることによって、婦人科系に関わる症状が軽減されることに期待があるでしょう。

 

欠乏症及び過剰摂取障害

ビタミンB6が欠乏すると、ペラグラ症候群、脂漏性皮膚炎、舌炎、口角症、リンパ球減少が起こり、成人ではうつ状態、錯乱、脳波異常、けいれん発作が起こります。

過剰摂取による症状には神経障害、骨部の疼痛、精子の減少、精巣委縮等が挙げられます。

ピリドキシンを大量摂取すると感覚性ニューロパシーを発症します。

 

ビタミンB6を含む食品

ビタミンB6は野菜、果物、調味料や香辛料、全粒穀物、まぐろの赤身等
に含まれています。

 

まとめ

ビタミンB6の働きについてまとめます。

  • アミノ酸代謝
  • 肝機能維持
  • 神経伝達物質の合成
  • 心血管疾患のリスク低減
  • 癌予防
  • 免疫力アップ
  • つわりの軽減
  • ホルモンバランスの調整

ビタミンB6は蛋白質の代謝に関わります。

その為、蛋白質を適量摂った上でビタミンB6を取り入れましょう。

 
栄養相談、サポート詳細
 

関連記事

最近の記事

  1. 大豆の大量摂取が甲状腺に影響を及ぼす…ゴイトロゲンとは?

  2. 強い抗酸化作用が秘められる「チコリ酸」

  3. いくら食べても太らない…隠れ肥満とサルコペニアのリスクの低減を図るには?