乳酸菌の機能性

乳酸菌が持つ主な機能性は、産生物質つまり乳酸や酢酸などの有機酸による「消化管内フローラ改善作用」、菌体や菌体成分による「免疫力調節作用」、菌体や乳酸菌がつくる有効成分による「生活習慣病関連因子の正常化作用」があります。

乳酸菌は主にこの3つの作用を通して人間の健康の維持・増進に寄与しています。

消化管フローラ改善作用には口腔内、胃、腸管それぞれの箇所で消化管内フローラのバランスを整えることで様々な病気を予防及び改善します。





 

口腔内での乳酸菌の働き

口腔内には500億以上の細菌が生息していると言われ、口腔内フローラを形成しています。

口腔内において乳酸菌は、歯周病菌の増殖を抑制して口腔内フローラを良好にし、歯茎を丈夫で健康に保つことにより、歯周病の改善に繋がることが期待されています。

 

消化器、腸管における乳酸菌の働き

腸内においては有用菌を増やし、有害菌を増やす作用をします。

ピロリ菌は強酸性の胃の中でも生息することが出来、胃、十二指腸潰瘍、胃癌の主要発生要因とされています。

日本におけるピロリ菌の感染者数は3500万人を越えていると言われ、特に中高年に多い傾向にあります。

ピロリ菌は乳酸桿菌によってピロリ菌の数が減少したという報告があります。

また、ピロリ菌の除菌成功率の向上も認められていると言われています。

生きたまま腸内に届いた乳酸菌がつくる乳酸、ビフィズス菌がつくる乳酸と酢酸は、腸内を弱酸性にして、有用菌数が優位になる環境を作ります。

乳酸桿菌によって腸内の有用菌であるビフィズス菌が増え、有害菌である大腸菌群が減少し、ビフィズス菌でも乳酸桿菌の増加と大腸菌群の減少が確認されています。

乳酸菌がつくる乳酸や酢酸等の有機酸は腸内の有害菌だけではなく、体外から侵入してきた有害微生物を撃退します。

また、酸による直接的な攻撃ではなく、腸の免疫機能を高めることによって、病気や食中毒の原因となる有害微生物やウィルスの感染を防ぎます。

乳酸菌の摂取により腸内の有害菌が減ると、有害菌が作り出す様々な有害物質の生成が抑制されます。

乳酸菌には、体内に発生した変異原性物質などの発癌物質を吸着して便と一緒に排出することで、発癌リスクを低減させます。

乳酸菌は便通の改善を図ると言われます。

乳酸菌が作る乳酸や酢酸などの有機酸が大腸を刺激し、蠕動運動を促すことによって排便を促します。

また、腸内フローラのバランスを改善して、腸内環境を良好にし、大腸における水分吸収機能を正常化して便の水分を調節し、便秘や下痢を改善します。




 

免疫機能強化

乳酸菌は菌体や菌体成分により免疫力の調節作用を行います。

乳酸菌は免疫力を調整し、感染症や癌に対する抵抗力を高めるとともに、過剰な免疫反応を抑制し、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー症状を抑えます。

乳酸菌は風邪やインフルエンザの予防、免疫機能の維持効果に期待出来ます。

乳酸菌の摂取により、唾液中のIgA抗体の濃度が一定に保たれます。

IgA抗体はβ細胞がつくる抗体の一つで、唾液や気道粘膜など下界と接触する場所に多く存在し、細菌やウィルスが体内に侵入するのを防ぐ役目があります。

このIgA抗体の濃度が保たれることにより、上気道感染の発症が抑制されるのです。

また、インフルエンザや風邪に見られる咳や喉の痛み、熱等の症状も軽減します。

乳酸菌は体内に発生した変異厳正物質などの発癌物質を吸着して便と一緒に体外に排出するとともに、NK活性等の免疫力を高めることにより、発癌リスクを低減します。

乳酸桿菌に摂取によってNK細胞活性の上昇効果があったとの報告があり、癌の再発においても摂取していない患者より摂取した患者の方が再発率が少ないということが認められています。

また、乳酸菌を習慣的に摂取することにより、膀胱癌、大腸癌、乳癌の発癌リスクを低減することが可能と言われています。

免疫細胞の一種であるヘルパーT細胞は、他の免疫細胞に指令を送り、免疫機能の司令塔の役割を担っております。

ヘルパーT細胞にはTh1細胞とTh2細胞の2種類があり、この両者のバランスが崩れると免疫が過剰反応を起こしてアレルギーを起こしやすくなります。

乳酸菌はこれらの免疫細胞のバランスを整えることで、過剰な免疫細胞を抑える働きをします。

 

腸のバリア機能強化

乳酸菌には細胞増殖促進物質である「ポリアミン」を生成します。

ポリアミンには小腸や大腸の粘膜を強化する働きがあります。

腸のバリア機能が強化されると、アレルゲン物質の通過を防ぐことが出来るようになります。

腸のバリア機能低下はアレルギーの原因となりますが、乳酸菌はこのような働きかけによってもアレルギー症状を抑えることが可能となります。

 

生活習慣病予防

乳酸菌には菌体や乳酸菌がつくる有効成分による「生活習慣病関連因子の正常化作用」があります。

生活習慣病は、食習慣、運動習慣、休養、飲酒、喫煙等の生活習慣がその発症、進行に関与するものであり、糖尿病、肥満、脂質異常症、高血圧症などがあります。

乳酸菌やその代謝産物には、LDLコレステロールの上昇抑制作用、内臓脂肪の低減効果、血圧低下作用等があり、生活習慣病の予防に役立つことが明らかになっています。

 

潰瘍性大腸炎の症状軽減の可能性

乳酸菌には潰瘍性大腸炎の症状軽減に役立つとされています。

潰瘍性大腸炎は、大腸のびらん(ただれ)や潰瘍ができる炎症性腸疾患で、下痢や血便、腹痛などが症状として現れます。

免疫反応の異常や腸内フローラの乱れが関与していると考えられていますが、その原因は明らかになっていません。

病気の根治が難しく、QOLを低下させる難病であり、大腸癌の発症リスクを高めることが知られています。

この潰瘍性大腸炎の憎悪予防や症状軽減に乳酸菌が役立つことが明らかになっています。




 

過敏性腸症候群にも関与

乳酸菌には過敏性腸症候群(IBS)の症状に関与していることが明らかになっています。

IBSは大腸に腫瘍や癌等の異常が認められないにも関わらず、腹痛や腹部の不快感を伴う下痢や便秘等の症状が繰り返される病気であり、はっきりした原因は解明されていません。

電車の中など公然の場で急にトイレに行きたくなるなど、QOLを低下させる問題となっています。

このIBSの症状緩和に乳酸菌が関与していることが分かるようになっています。

 

その他

乳酸菌は大量のアルコール摂取による肝障害から肝機能低下を起こしてしまった肝機能の状態を改善し、体内の炎症を抑える作用が明らかになっています。

肝炎や肝硬変の予防に繋がることが期待されています。

乳酸菌にはストレスの緩和作用や、ストレスによる睡眠の質の低下を改善する作用が知られており、メンタルヘルスの向上が期待されます。

乳酸菌には様々な機能性が報告されており、今後の乳酸菌研究の進展により、更なる機能性を解明されることが期待されるでしょう。

 
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