「炭水化物は太る」
この言葉は決して間違ってはいません。
炭水化物抜きダイエットに取り組み人がいる一方、糖尿病の食事療法はカロリーだけに着目している専門家も今だにいます。
ダイエットや糖尿病の食事療法のいて、炭水化物の問題は向き合うべきものなのです。
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カーボカウントという食事療法
日本での糖尿病の食事療法は、日本糖尿病学会が推奨する「1日の摂取エネルギーをコントロールする食品交換表」に基づいたカロリー制限が一般的です。
6つの食品群ごとに1日あたりの摂取カロリーが決められており、血糖値を左右するのはカロリーの高低によるという見方をされます。
一方「カーボカウント」は食品中の炭水化物の量を数えることが基本になり、炭水化物の多い食品には注意を払う必要がありますが、少ない食品についてはカロリーが高い食品であっても、それほど気にすることをしない糖尿病食事療法です。
欧米ではカーボカウントを糖尿病の食事療法として取り入れており、最近では日本でも注目されています。
カーボカウントの由来は炭水化物の「カーボハイドレイト」と数える意味の「カウント」を併せ、「炭水化物の量を数える」意味からなっています。
血糖コントロールの鍵を握るのは炭水化物
血糖値のコントロールの鍵を握っている栄養素は炭水化物なのです。
脂質、蛋白質はエネルギー源となっていますが、血糖値には大きく左右しないのです。
対象者の病態によっては脂質や蛋白質のコントロールは必要となりますが、脂質や蛋白質を摂り、摂取エネルギーが増えたところで、血糖値にさほどの影響を与えないのです。
カーボカウントは炭水化物摂取量に着目した糖尿病の食事療法です。
食事の基本は栄養バランス
糖尿病の方に限らず、食事の基本はバランスが大切です。
その為、カーボカウントによる糖尿病の食事療法も、栄養バランスもとる必要があります。
炭水化物の摂取量は患者様の血糖コントロールや体型によってアプローチが様々です
肥満が原因の場合にはカロリー制限を兼ねた食事療法が必要となり、やせ型で高血糖の場合は炭水化物の量を抑えつつ、炭水化物以外のもので体重増加を図る為の食事療法が必要となり、更に体重低下の理由に応じて個々に対応していかなければなりません。
血糖降下剤やインスリン投与の関係から医師の総合的判断を踏まえた上で、食事療法を行うことが前提となります。
血糖値は常に一定ではありませんので、変化がみられる時は医師に相談して指示を仰ぐことが必要です。
炭水化物の算出方法
一般的には食事全体の50~60%を炭水化物によるエネルギー摂取比率の目安とします。単位としては炭水化物の量15gに対し1カーボと計算します。
計算方法
1日の摂取エネルギー×50~60%÷4(4=炭水化物1gあたりのエネルギー)
この計算によって1日あたりの炭水化物の摂取量が算出されます。これを3食の食事に振り分けた上でメニューを考えていきます。
炭水化物抜きダイエットの弊害
中には炭水化物に着目することによって「炭水化物は糖尿病に良くないから抜く」という極端な発想をする場合があります。
炭水化物も日常生活を送っていく上で必要な栄養素なので、摂らなければ脳の栄養源となりませんし、長時間の空腹状態からの血糖値の乱高下を招き、血糖コントロールの不安定を招きます。
グルテンフリーやローカーボが流行り、飲食店でも炭水化物を抜く代わりに肉を使うメニューが考案されるケースも少なくありません。
この場合、蛋白質や脂質の摂取比率が上がり、炭水化物は殆どない為、血糖値の乱高下は起こりませんが、このような食事を常食していると、動物性脂質の割合が増えることによって飽和脂肪酸(長鎖脂肪酸)の摂取量も増えてしまいます。
これによって脂質異常症や動脈硬化が起こりやすくなり、更に心疾患や脳血管疾患に至るリスクが高まります。
更に脂肪分が多いと摂取カロリーも多い為、肥満を招いてしまいます。
また、蛋白質の大量摂取を続けてしまうと腎臓を傷めてしまいます。
特に動物性蛋白質にはリンも含まれる為、腎機能の悪化を進行させてしまいます。
腎不全は一度かかってしまうと不可逆的な為、進行するにつれて食事制限が厳しくなってしまいます。
炭水化物を摂ることはインスリンの分泌を促すことになりますが、このインスリンは骨格筋にも作用します。
インスリンは骨格筋ではアミノ酸の取り込みを促進します。
その為、筋蛋白合成を促し筋蛋白分解を抑制します。
炭水化物を摂ることは、骨格筋量の維持に繋がるのです。
炭水化物の選び方と副食の摂り方
このようなことにならない為にも、ある程度の炭水化物の確保が必要なのです。
炭水化物も摂り方が重要であり、比較的食後血糖を上げにくいものを選ぶことがポイントとなります。
当然、砂糖が入った市販のお菓子は食後血糖値を急激に上げるので摂取を控えます。
炭水化物は主に穀類や芋類から摂取します。
穀類を摂取する時は、精白したものよりも、皮が残ったものの方が食後血糖値の上昇を抑えられます。
同じお米でも精白米と玄米がありますが、玄米の方が栄養価が高く血糖値の上昇を抑えられます。
但し、玄米は体質的に合う合わないがあります。
苦手な場合は分搗き米や胚芽米を用います。
また、雑穀とミックスすると雑穀からの栄養素が摂れます。
お米の籾や胚芽、雑穀には栄養が豊富であり、ビタミンB群も含まれ、炭水化物をエネルギーとして利用する働きがあります。
麺類では精白されていない粉を使っているそばが炭水化物の吸収が少なく、栄養価も高くなっています。
小麦粉製品についても全粒粉を用いた製品の方が栄養価が高く、血糖値の上昇も緩やかです。
蛋白質においては、主菜として1日あたり「体重(kg)×1~1.2(係数)」を目安にすると良いでしょう(腎不全の場合は進行度合いによって係数が小さくなる)。
卵、納豆、豆腐(冷奴)は食品交換表の1単位に基づく量が適度です。
ただ、エネルギーの消費が亢進し、筋肉の減少を起こしている場合は、良質な脂質を併用して摂取カロリーを増やすとともに、BCAAを意識して蛋白質を摂ると良いでしょう。
野菜や海藻、きのこ類を中心とする副食は、ビタミン、ミネラル、食物繊維の摂取の観点から、毎食2品取り入れるのが理想的です。
まとめ
糖尿病の食事療法において、血糖コントロール調整には全てカロリーが司っているわけではないのです。
また、糖尿病に罹患されていなくても、普段から糖質の摂取量や質を意識し、健康的な身体を可能な限り維持していくことが、健康寿命の延長に繋がっていくのです。