グルテンが身体に与える影響が問題として取り上げられている今、小麦は身体に悪い食品として見られているのが今の現状です。
しかし、小麦の栽培は9000年ほど前から行われ、パンを食べる歴史はメソポタミア時代からあったと言われることから、人々は長きに渡って小麦と付き合ってきました。
また、日本では昔から麩を食べる文化がありました。
麩は蛋白質の補給源となっていますが、これは麩に含まれるグルテンによって蛋白質が補給されるからです。
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小麦の分類
小麦はイネ科、コムギ属の植物です。
小麦は大きく分けると、一粒系、二粒系、普通系の三系統に分類されます。
小麦の染色体は7本一組という構造になっています。
この遺伝子の組み合わせをゲノムと呼び、ゲノムの数や種類、組み合わせによって分類されます。
一粒系の場合はAゲノムを二つ持つことから二倍体となります。7本一組の染色体を二つ持つことから、染色体数が14となります。
これに該当する小麦がヒトツブコムギに該当します。
二粒系はAゲノムとBゲノムを二つずつ持つことから四倍体となります。このため、染色体を四つ持つことから染色体数が28になります。
二粒系に該当するものが、エンマー小麦、デュラム小麦、ポーランド小麦、リベット小麦です。
三粒以上稔実するものが普通系であり、これはA、B、Dのゲノムを各二つずつ持つため6倍体となります。その為、染色体数が42になります。
普通系に該当するものが普通小麦、スペルト小麦、クラブ小麦になります。
これを表に表すと次のようになります。
ゲノム | 染色体数 | 品種 | |
一粒系 | AA | 14 |
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二粒系 | AABB | 28 |
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普通系 | AABBDD | 42 |
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この中でも一番古い品種であるのがヒトツブコムギです。
これが自然交配によって染色体の多い品種が生まれます。
ヒトツブコムギはBゲノムを二つ持つ品種のものと自然交配して、染色体を28個持つフタツブコムギを生み出しました。
これが変性によって様々な種類の小麦を生み出します。
この中でデュラム小麦はDゲノムを持つタルホ小麦と交配して、遺伝子を増加し、変異によってパン小麦が生み出されました。
このように、遺伝子数の増加や変異があったものの、至って自然の中で生み出された小麦の変異は著しいものではありませんでした。
小麦の栄養
小麦の栄養は主に炭水化物ですが、この他に蛋白質、レジスタントスターチも含まれています。
小麦の糖質の7割がデンプンを占めています。
蛋白質は必須アミノ酸が全て含まれているものの、リジンはあまり含まれていません。
その為、蛋白質を主に含む食品と一緒に摂らないと、必須アミノ酸を充足させることが出来ません。
ビタミン、ミネラルは全粒穀物には含まれるものの、精白されたものには殆ど含まれていません。
小麦の栄養は主にふすまや胚芽に含まれます。
ビタミンはビタミンB1、ビタミンB2、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、パントテン酸、ビオチン、ビタミンEが含まれ、ミネラルはカルシウム、カリウム、リン、マグネシウム、鉄分、亜鉛、マンガンが含まれます。
また、全粒粉になれば食物繊維が豊富になり、精白したものより低GIになります。
小麦の害
小麦が大きく変異し、危険な食品と化してしまった原因は、緑の革命にあります。
20世紀半ばである当時、高収容品種や化学肥料の導入により穀物の大量生産が可能となったのです。
これまで主流となっていた在来品種は、倒れやすく、肥料を増量しても収穫量の増加に繋がりませんでした。
そして、小麦の生産量を上げるために人工的な交配を行い、小麦の遺伝子が急速に変化するようになったのです。
これが災害や害虫、冷害や日照りに強い小麦の開発の成功に至ったのです。
当時はこれによって世界的な飢餓を救ったのですが、これと引き換えに新たな問題を発生させてしまいました。
小麦の遺伝子の変化は、遺伝子操作によってグリアジンの量を増やしました。
グリアジンが増えることによって粘着力の強い品種を作り上げたのです。
小麦粉のグルテン含有量が遥かに多くなったものの、このグルテンが体に弊害をもたらしてしまいます。
その小麦の害には次のものが挙げられます。
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セリアック病、リーキーガット症候群
セリアック病はグルテンによって免疫反応を引き起こし、下痢や便秘の症状を起こします。
リーキーガット症候群は、腸に炎症を起こして腸管障害を起こし、腸の粘膜が壊れることによって、本来体内に入るべきではない有害物質や毒素の侵入を妨げることが出来なくなる症状です。
また、腸管に穴が開くと、せっかく摂った栄養素が吸収されなくなります。
その為、栄養があるものを摂ることを心がけても、その努力は水の泡となってしまうのです。
その結果、肌荒れ、アトピー、花粉症、ADHD、頭痛、鬱などの症状を引き起こすと言われます。
小麦中毒
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もし、このような行動を起こしている場合は、グルテン中毒になっている可能性があります。
グルテンは体内で分解されると、グルテオモルフィンという物質に変化します。
グルテオモルフィンのモルフィンとは、モルヒネを言います。
グルテオモルフィンにはオピオイド系の作用があることが疑われ、強い鎮痛作用とともに依存性を兼ねています。
元々モルヒネは、アヘンから作られる麻薬鎮痛剤です。
このことから、グルテオモルフィンには強い依存性をもたらし、小麦製品が止められなくなると考えられます。
血糖値の急上昇
小麦の糖質の7割がデンプンにも拘らず、小麦は血糖値の急上昇が非常に激しく、これが小麦の危険な理由の一つです。
小麦のGIが砂糖より低い筈ですが、小麦は砂糖よりも激しく血糖値を上昇させてしまうには原因があります。
この原因とは、品種改造された小麦に含まれるアミロペクチンAです。
アミロペクチンAによる血糖値の上昇は白砂糖より激しく、血糖スパイクを引き起こします。
血糖値が急激に上昇すればそれだけ大量のインスリンを分泌する必要があり、更に大量分泌したインスリンは血糖値を急激に下げます。
血糖値の乱高下を引き起こすと、鬱や統合失調症を引き起こしやすくなり、キレやすくなります。
血糖コントロールが乱れれば、糖尿病や脂質異常症、循環器疾患のリスクが高まります。
インスリンの大量分泌は肥満の原因となり、肥満になるとインシュリン感受性が低下して、生活習慣病の悪化を進行させてしまいます。
著しい低血糖を起こせば、身体を命から守る為にアドレナリンが大量分泌されます。
アドレナリンの分泌は血糖値を上昇させます。
糖化を起こしてしまうと、全身の老化を進行させ、糖尿病の三大合併症である糖尿病性腎症、網膜症、神経障害を起こすリスクが高まります。
また、高血糖は合併症のリスクを加速させてしまいます。
更に、リーキーガット症候群を起こしていると、腸管からビタミンやミネラルの吸収が阻害される上に、ビタミンB群が生成されません。
ビタミンB群やミネラルはエネルギー代謝において補酵素としての役割を担います。
そうなってしまうとエネルギー代謝が正常に行わない上に、糖や脂肪が燃焼されません。
疲労しやすい上に、脳機能が正常に働かなくなります。
グルテンは有害なものではなかった
グルテンは有害説が広げられていることから身体に悪いイメージが強いですが、グルテンは元々脳機能を向上させる働きを持っています。
グルテンは加水分解すると、グルタミン酸に変化します。
グルタミン酸は脳に多く存在し、脳や神経の機能に必要なアセチルコリンの生成に関わります。
しかし、人工的に化学合成されたグルタミン酸は、化学的な構造が同じにも関わらず、身体への影響が大きく異なってしまいます。
化学的に合成されたグルタミン酸は、寧ろノイローゼの原因になります。
これはグルテンそのものにも言えると考えられます。
日本では昔、麩は蛋白質の摂取源として扱われ、その蛋白質はグルテンです。
麩は、小麦粉に水を加えて練って、水でデンプン質を流してグルテンを取り出し、このグルテンに水や餅粉を加えることで作られます。
しかし、現在多く出回っている小麦の多くは、グルテンの害が懸念されます。
これは、小麦が悪い、グルテンが悪いというより、人間側の都合で食物の遺伝子を操作してしまったことが大きな原因と考えられます。
しかし、現在栽培されている小麦の多くは、グルテンが懸念されます。
更に、グリホサートによる汚染も気になります。
粉物と付き合うには?
小麦が危ないと言われている中、健康志向が強い人にとって、出来ればグルテンフリーを心がけたいと思っているでしょう。
主食を選ぶのであれば、米を中心に摂ることがより安全と言えます。
かと言って、日常生活で完全に小麦を絶つことは困難です。
但し、小麦アレルギーやグルテン不耐症がある場合は、小麦を避ける必要があります。
特に小麦アレルギーもなく、グルテン不耐症が著しいのでなければ完璧を目指すまででもないでしょう。
例えばお付き合いで食事をする時や外出時には、グルテンを含む食品を選ばざるを得ない時があります。
今の小麦はグルテンだけでなく、グリホサートのことも懸念されます。
もし、小麦製品を摂るのであれば、しっかり噛むことです。
小麦製品は消化しやすく殆ど噛むことがありませんが、噛む回数を増やすと唾液の分泌量が増えます。
唾液の作用の一つには殺菌作用があります。
この作用によって食品に含まれる毒性を弱めることが出来ます。
また、普段から肝臓をはじめとするあらゆる臓器を労わります。
そのためには、お菓子や清涼飲料水など砂糖が沢山使われた食品の摂取を控える、動物性蛋白を摂り過ぎない、加工食品、ジャンクフードの摂取を控えることを心がけます。
それから、普段から腸内環境を整えることを忘れないようにしましょう。
そして、時々断食を行ったり、汗をかくなどして、時々有害物質を排出します。
何よりも忘れてはならないのは、食事を楽しむことです。
小麦は身体に悪いとあれこれ理屈に走ってしまえばストレスとなり、活性酸素を増やしてしまい、体調悪化へと進んでしまいます。
嬉しい、楽しいという感情はナチュラルキラー細胞を活性化させます。
そのため、身体にとって有害なものからの影響を受けにくくなります。
食べることを楽しむことは、自然の恵みに感謝することに繋がり、感謝して食べることは身体に自然の恩恵をもたらしてくれるのです。