ビオチンはビタミンB群の一種で、以前はビタミンB7と呼ばれていました。
においや味はなく、水溶性であり、熱、光、酸に強く、アルカリに弱い性質があります。
ビオチンは肝臓、腎臓、筋肉、乳腺、消化管の順に多く存在します。
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ビオチンの働きと代謝
ビオチンは体内で補酵素として、糖代謝に関わるビルビン酸カルボキシナーゼ、脂肪酸の合成に関わるアセチルCoAカルボキシナーゼ、アミノ酸の代謝に関わるβメチルクトロニツCoAカルボキシラーゼ、プロピオニルCoAの代謝に関わるプロピオニルCoAカルボキシナーゼとして働きます。
欠乏すると乳酸アシドーシスなどの障害を起こします。
その他に皮膚や粘膜の健康維持を助ける効果及び抗炎症物質を生成することによって、アレルギー症状を緩和する作用があります。
細胞中のビオチンは、殆どが蛋白質中のリシンと供に共有結合した形で存在します。
食品の調理、加工過程において、殆ど遊離型になることはありません。
消化管においては、まず蛋白質が分解を受け、ビオチニルペプチドやピオシチンとなります。
これらが加水分解された後、最終的にビオチンが遊離され、主に空腸から吸収されます。消化過程は食品ごとに異なり、一緒に食べる食品によっても影響を受けます。
糖質の代謝
炭水化物は体内で消化されると小腸から吸収され、血液によって全身の細胞に運ばれエネルギー源となり、この糖を吸収し、エネルギーに変換する糖代謝と言います。
特に脳や神経組織、赤血球等はブドウ糖だけをエネルギー源として利用している為、体内で重要な役割を果たす糖代謝にビオチン関わっているのです。
ブドウ糖が燃焼してエネルギーが産生されると乳酸が発生します。
乳酸が溜まることによって筋肉痛や疲労が起こります。
乳酸は肝臓に運ばれ、再びブドウ糖を作り出してリサイクルしています。
このリサイクルの過程である「糖新生」において乳酸がピルビン酸に変えられ、ピルビン酸は酵素の働きによってオキサロ酢酸に変化する時に、ピルビン酸は「カルボキシナーゼ」という補酵素として働くことによってブドウ糖に作り変えます。
(拡大図は上の画像又は青文字をクリック…糖新生 pdf)
ビオチンはアミノ酸からブドウ糖が体内で作られる時にも補酵素として活用されています。
脂肪酸代謝
ビオチンはアセチルCoAカルボキシナーゼとして脂質合成に関わります。
ブドウ糖は解糖系を経てピルビン酸に分解され、ミトコンドリア内にてクエン酸回路を経て、ピルビン酸脱水素酵素の働きによってアセチルCoAにを経て、クエン酸シンターゼによりクエン酸となります。
細胞質に移動した後、クエン酸はクエン酸リアーゼによってふたたびアセチルCoAに再合成されます。
このアセチルCoAがマロニルCoAに合成する時にアセチルCoAカルボキシナーゼとして、この反応を解媒する補酵素として働くのです。
(拡大図は上の画像又は青文字をクリック…脂肪酸の利用、合成pdf)
アミノ酸代謝
酵素のカルボキシナーゼはアミノ酸の代謝に関わり、ビオチンは補酵素としてこの働きを補助しています。
アミノ酸は体内で食事から摂った蛋白質が消化、分解して作られます。
アミノ酸は糖と脂肪とともにエネルギー源となる他に、身体の至る部分でコラーゲン等の蛋白質を合成し、筋肉や皮膚、粘膜、髪の毛等をつくります。
また、亜鉛と協力することによって、ビオチンは核酸(DNA、RNA)の補酵素としても働きかけ、蛋白質の合成を助けています。
花粉症予防
ビオチンには抗炎症物質生成によって症状の原因となるヒスタミンの産生を抑え、アレルギー症状を緩和します。
更にビオチンにはヒスタミンを尿中に排泄させる作用があります。
ヒスタミンはアトピーだけではなく、様々なアレルギーや花粉症などの原因にもなっている為、ビオチンは抗アレルギー効果があると期待されています。
欠乏症及び過剰摂取障害
ビオチン欠乏症は、リウマチ、シェーグレン症候群、クローン病等の免疫不全症だけではなく、1型及び2型糖尿病にも引き起こすと考えられています。
ビオチンが欠乏すると、乾いた鱗状の皮膚炎、萎縮性舌炎、食欲不振、むかつき、吐気、憂鬱感、顔面蒼白、性感異常、前胸部の痛みなどの症状を呈します。
ビオチンの含有量が100gあたり数十㎍を超える食材は肝臓以外存在しません。通常通り食品を摂取していれば、過剰摂取による健康障害は殆どないと言えるでしょう。