身体に悪いと言われていた「飽和脂肪酸」の有用性

飽和脂肪酸とは脂肪酸の分子構造に二重結合がなく、炭素の手がすべて水素と結合したつくりとなっています。

主に肉や卵、牛乳などの食品に含まれていることから「動物性脂肪」とも言われています。

最近では飽和脂肪酸が必ずしも身体に害を与えるものとは限らず、中鎖脂肪酸や短鎖脂肪酸の効能に注目されています。




 

飽和脂肪酸の分類

飽和脂肪酸は3つに分類されます

長鎖脂肪酸(12鎖以上) ラード、ヘッドになどに含まれ、脂肪になりやすい
中鎖脂肪酸(6~12鎖) ココナッツオイル等に含まれ、エネルギーになりやすく太りにくい
短鎖脂肪酸(6鎖以下) バターや酢に含まれ、エネルギーになりやすく、最も太りにくい

 

長鎖脂肪酸

長鎖脂肪酸は鎖が長く、分解も消化もされにくいという特徴があり、動物性脂肪に主に含まれる脂肪酸です。

長鎖脂肪酸の種類と役割は以下の通りとなります。

ミリスチン酸 蛋白質の作用を促進してホルモン分泌を促す
細胞膜の保護
パルミチン酸 ビタミンAを安定させる
皮脂としての役目
細胞膜の材料
ステアリン酸 抗酸化作用によるしわの予防

動物性脂肪は融点が高く、体温が39℃以上の動物の体内では支障をきたさないのですが、人間の身体は36~37℃なので、体の中で固まりやすくなり、代謝の低下や冷え性の原因となります。

また、その脂肪が中性脂肪として、そのまま蓄積してしまうことにより肥満のリスクも高くなり、生活習慣病を引き起こしやすくなります。

その為、摂りすぎてしまうと健康面で大きくデメリットとなります。

実はオリーブオイルにも長鎖脂肪酸が含まれています。

ただし、オリーブオイルには悪玉コレステロールの除去、善玉コレステロールの維持という働きがあります。

そしてオリーブオイルには抗酸化作用のあるビタミンAやビタミンE、ポリフェノールも含んでいるので、腸内環境改善や美容効果もあります。

ただし、長鎖脂肪酸が含まれているので過剰摂取は控えるべきです。

また、オリーブオイルを選ぶのならエキストラバージンオリーブオイルを選ぶと良いでしょう。

 

中鎖脂肪酸

中鎖脂肪酸は鎖の数が6~12個とまとまった脂肪酸です。

中鎖脂肪酸の一番の特徴となっているのは、体の中に溜まっている脂肪を分解し、燃焼する作用があることです。

中鎖脂肪酸は体脂肪として吸収されにくい特徴も持っています。

中鎖脂肪酸は摂取した後、肝臓に貯蔵されることがなく、一直線に消化されるようになっている為、溜まった老廃物や脂質等も分解して、エネルギーとして消費させます。

更に中鎖脂肪酸はBCAAと組み合わせると「筋蛋白質合成促進」「筋蛋白質分解抑制」にといった蛋白質の働きを助長させます。

これらの作用は成長期のお子様、体脂肪を燃焼させて筋肉を付けて痩せ体質を作りたい方、筋トレで筋肉を付けたい方、高齢者のサルコペニア対策等、幅広い年齢層に役立つのです。

中鎖脂肪酸の各々の働きについてまとめます。

カプリン酸 エネルギー代謝
カプリル酸 殺菌作用
脂肪燃焼
脳の栄養
ケトン体生成
カプロン酸 エネルギー代謝
ラウリン酸 ケトン体生成
免疫機能強化

 

短鎖脂肪酸

短鎖脂肪酸は腸内環境改善に大きく関わります。

腸内環境改善に大きく関わる短鎖脂肪酸には酢酸、酪酸、プロピオン酸があります。

腸内環境改善

短鎖脂肪酸は腸内を弱酸性に保つ働きがあります。

腸内には善玉菌、悪玉菌、日和見菌の3種類が存在します。腸内PHがアルカリに傾くと悪玉菌が優位になり、それに付槌して日和見菌が悪玉菌同様の働きをします。

短鎖脂肪酸は腸内PHを弱酸性に傾ける為、善玉菌が優位となりこれに付槌して日和見菌も善玉菌をサポートします。

腸管内が弱酸性になることによって有害な二次胆汁酸の生成を抑えることに繋がります。

善玉菌が優位になると腸内環境が改善され、便通改善、免疫力アップ、太りにくい体質作り、抗アレルギー、癌予防、メンタルヘルスの向上、肝炎・肝硬変の予防、生活習慣病の予防の効果に期待があるでしょう。

肥満予防

短鎖脂肪酸は飽和脂肪酸の中でも最も太りにくい脂肪酸であり、筋肉からの脂肪燃焼を促進し、また交感神経を優位にする働きもあるので、エネルギーを消費しやすくします。

また食欲を抑える働きもあるので、肥満予防に有効です。

免疫力強化、感染症予防

短鎖脂肪酸のうちの酪酸、プロピオン酸には腸の粘膜を丈夫にし、ウィルスや病原菌の体内侵入を防ぐ働きがあります。

酪酸にはTreg細胞を増やす働きがあり、過剰な免疫反応を抑制することに寄与しています。

これによって免疫力が高まり、アレルギー症状や風邪やインフルエンザなどの感染症予防にも役立つのです。

また、腸管のバリア機能を高める為、食中毒予防にも良いとされています。

インスリン分泌促進

短鎖脂肪酸にはインクレチンというホルモンを分泌させる働きがあります。

インクレチンは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌されるインスリンの分泌を促す働きがありますので、糖尿病の治療にも有効的です。

但し、インスリン感受性が弱まっているとインスリンを沢山分泌しても血糖値が改善されないことがあります。

インスリン感受性を高めるにはバランスの良い食事、運動習慣、ストレス対策等の生活習慣を整える必要があります。

栄養素の吸収を促進

酪酸は大腸のエネルギー源となります。

酪酸菌による腸内環境改善は大腸が持っているミネラルや水分の吸収作用を更に促進させるとのことです。

癌予防

酪酸には大腸の細胞の異常増殖を抑え、アポトーシスを促すことで癌予防効果に期待があります。

酢酸やプロピオン酸は体内では主に筋肉や肝臓に分布されます。

プロピオン酸は短鎖脂肪酸受容体に作用することによって癌細胞の増殖を抑えると言われます。

水溶性食物繊維からも摂取可能

短鎖脂肪酸は水溶性食物繊維から作ることが出来ます。

水溶性食物繊維を含む食品は野菜類、果物類、海藻類が挙げられます。

水溶性食物繊維は酪酸を育てます。

更に水溶性食物繊維は生活習慣病予防効果の他にも前述した腸内環境改善にも関わる成分なので、日ごろから意識して摂ることが大切です。

 
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