MIND食は、2015年に、アメリカのシカゴのラッシュ大学メディカルセンターの研究チームが、アルツハイマー型認知症の発症リスクを低下させるのに、有効な食事法として発表されたものです。
MIND食はDASH食と地中海式食事法の長所を取り入れたものであり、脳の健康を保つための10種類の食品を積極的に摂り、控えたい5種類の食品を出来る限り摂らない食事方法です
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認知症とは
認知症は認知障害の一種であり、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態を言います。
認知症とは脳の認知機能が後天的な脳の器質的障害によって、「記憶障害」「認知機能の障害」及び「日常・社会生活に支障」をきたす状態をさします。
代表的な認知症には、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症、脳血管性認知症が挙げられ、それぞれ特徴的な症状を呈します。
更に認知症を大きく分けると脳血管性認知症と変形性認知症の2種類に分けられます。このうち、アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症が変形性認知症に該当します。
大脳の構造は「前頭葉」「頭頂葉」「側頭葉」「後頭葉」の4つの領域からなっています。アルツハイマー型認知症は頭頂葉、側頭葉に障害が現れ、海馬が萎縮します。
レビー小体型認知症は後頭葉に障害が現れます。
前頭側頭型認知症は前頭葉と側頭葉に障害が現れます。
脳血管性認知症は前頭葉が多いですが、脳血管疾患の起こった部位によって障害が様々です。
認知症の種類 | 障害 |
アルツハイマー型認知症 |
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レビー小体型認知症 |
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前頭側頭型認知症 |
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脳血管性認知症 |
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中核症状には以下の症状が見られます。
症状 | 詳細 |
記憶障害 | 記憶は「記銘」「保持」「想起」の3段階からなる。認知症になると新しいことを覚えられなくなる(記銘障害)。進行すると「保持」「想起」の機能も障害される。 |
見当識障害 | 時見当識は周囲の状況を正しく認識する能力のことであり、見当識障害になると時間、場所、人物の順に障害される |
遂行機能障害 | 計画の立案・実行等の機能が障害され、物事を段取り良く進められなくなる。 |
失語 | 脳の損傷が原因で、読む、聞く、話す、書くなどの言語機能が失われた状態。 |
失行 | 実行しようとする意志があるにも関わらず、正しい動作を行えない状態。 |
失認 | 感覚器に異常がなく、注意や知能などの一般的な精神機能が保持されているにも関わらず、対象を認知出来ない状態。 |
これらの中核症状によって、徘徊、興奮、暴力、不潔行為、幻覚、妄想、異食などの行動が見られるようになります。
認知症はせん妄と混同されやすいですが、せん妄は身体的な因子に発症した意識障害であるのに対し、認知症は神経細胞の脱落により生じた脳の機能的障害という違いがあります。
看護や介護を行う上でのアプローチ方法は全然違うものとなります。それぞれの違いは下の表の通りです。
せん妄 | 認知症 | |
発症 | 急激 | 徐々に進行 |
期間 | 数時間~数日 | 永続的 |
日内変動 | 夜間や夕方に悪化 | 日内変動は乏しい |
意識 | 変動する | おおむね正常 |
幻視 | あり | 少ない |
脳血管性認知症では感覚障害、運動障害、感情失禁、まだら認知症等の症状が見られます。
脳血管障害は一度起こした後、再発を繰り返し、段階を追って障害が重くなります。
その悪化の過程において局所的に神経症状を呈し、認知機能障害が現れます。
涙もろい、笑い上戸など、感情が不安定なのも、脳血管性認知症の症状の特徴の一つです。
マインド食のポイント
ここでマインド食による食事療法的な話になります。
脳の健康を保つための10種類の食品と避けたい食品について話していきます。
脳の健康を保つための10種類の食品は、次の通りになります。
緑黄色野菜と淡色野菜を積極的に摂る
MIND食では緑黄色野菜は週6回以上、淡色野菜は1日1回以上摂ります。
野菜は、ビタミンCや食物繊維の摂取源となり、緑黄色野菜は抗酸化ビタミンである、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEが多く含まれています。
また、野菜類には、食品各々にファイトケミカルが含まれており、抗酸化作用や抗菌作用といった働きで、老化を防いだり、感染症から身を守ります。
種実類は週5回以上
種実類は週5回以上が目安となります。食物繊維が豊富であり、カルシウムやマグネシウム、カリウム、亜鉛など、ミネラルの補給源になります。
ベリー類は週2回以上
ベリー類は週2回以上が目安になります。これらには、アントシアニンが含まれ、抗酸化作用があることで有名です。
アントシアニンは、目の網膜にあるロドプシンという色素の再合成を助ける働きがあります。
アントシアニンには、ヒスタミンの量を抑える働きがあり、花粉症による不快な症状を軽減させる働きがあると言われます。
豆類は週3回
豆類は週3回を目安に取ります。
豆類は蛋白質の摂取源であり、食物繊維やマグネシウムやカリウムなどのミネラル、その他抗酸化成分も含まれています。
大豆をはじめ、豆類にはイソフラボンが含まれます。
全粒穀物は週3回
全粒穀物は週3回を目安とします。穀物の栄養は、主に胚芽や糠の部分に含まれます。
胚芽や糠の部分には、ビタミンB群、ビタミンE、食物繊維、ミネラルが豊富に含まれます。
ビタミンB1,マグネシウムは糖質の代謝に関わり、糖質が脳の栄養として活かすことに重要な役割を持っています。
ビタミンB1、マグネシウムが不足すると認知症を発症しやすくなります。
魚を毎日食べる
魚は出来るだけ毎日摂るのが望ましく、EPAやDHAの摂取に繋がります。
EPAは、血液の粘度を下げて血流をアップします。
DHA酸は、脳や神経組織の成長や機能の維持に関わります。
そのため、これらオメガ3脂肪酸には、記憶力や学習力を高める働きがあると言われます。
そして、蛋白質が豊富なうえに、必須アミノ酸の摂取源になります。
蛋白質は神経伝達物質の前駆体や、受容体の構成成分としての役割を担います。
また、魚の中でも、いわし、サンマ、鮭はビタミンDが含まれています。
鶏肉は週2回
鶏肉は週2回を目安にします。
鶏肉は魚同様に、蛋白質、必須アミノ酸の摂取源になります。
オリーブオイル
オリーブオイルは、オレイン酸が含まれていることから、血液をサラサラにして、循環器疾患から守ります。
赤ワイン
赤ワインは1日あたり1杯が目安です。
赤ワインが飲めない場合は、無理に飲む必要はありません。
避けたい食品
避けたい食品には,
赤身肉、バター、チーズ、揚げ物、菓子類が挙げられます。
これらの食品には飽和脂肪酸が含まれているからです。
飽和脂肪酸の過剰摂取は、悪玉コレステロールを増やします。
悪玉コレステロールが酸化すると、動脈硬化を起こしやすくなります。
その結果、血液の循環を悪化させて、認知症に至るため、マインド食では、この5つの食品を避けるように謳っています。
認知症予防はBDNFを増やすこともポイント
BDNFとは、脳由来神経栄養因子のことを言います。
このBDNFは脳や神経の作用に関わり、神経同士のネットワークを結び付けて、脳神経の連携を円滑にするものです。
BDNFを増やすには、適度な運動、栄養、日光浴が鍵を握っています。
栄養の中でも、特に注目されているのがポリフェノールです。
ポリフェノールは、豆類やベリー類、赤ワイン、ナッツ、カカオなどに含まれ、一部の野菜、果実にも含まれます。
これらからポリフェノールを摂取することにより、ビーディーエヌエフを増やして、脳内のネットワークの連携を図り、認知機能の低下の予防を図ります。
日光浴は、ビタミンDの供給源になります。
特に、朝の日光浴は、日周リズムを整えます。
また、朝に日光浴を行うことでセロトニンを増やします。
セロトニンはメラトニンの材料となり、質の良い睡眠に繋げられます。
ビタミンDの中でもビタミンD3は、脳で活性型のビタミンD3に変換されます。
活性型のビタミンD3は、脳細胞の保護や分化に関わり、うつや統合失調症、自閉症などの精神疾患の予防に期待があります。
また、ビタミンDそのものが、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病との相関性があります。
脳の中で記憶を司る海馬には、脳の老化防止、活性化を導く蛋白質と、脳内神経の回路の形成に関わる蛋白質があります。
ビタミンDはこの二つの蛋白質の合成を促し、アルツハイマー型認知症やパーキンソン病を予防すると言われています。
ホモシステインの上昇を抑える
ホモシステインとは、必須アミノ酸のメチオニンの中間代謝物です。
メチオニンが正常に代謝されないと、ホモシステインが上昇します。
ホモシステインの上昇は認知症の原因の一つとされます。
ホモシステインは活性酸素を産生します。
その為、抗酸化作用のある栄養成分が不足すると、血液中の中性脂肪やエルディーエルコレステロールが酸化し、血管を硬化させてしまい、血流が悪くなります。
その結果、脳に栄養が行き届かなくなることがあります。
ホモシステインがメチオニンに変換する時に葉酸が働き、この時にビタミンB12はメチオニンシンターゼとして、葉酸を助けます。
そして、蛋白質の代謝に関わるビタミンB6の働きもあって、代謝が正常に行われます。
ビタミンB6を摂るには、蛋白質源、野菜、果物といったバランスのとれた食事を摂ることが基本となります。
葉酸はレバーに多く含まれますが、枝豆、いちごにも多く含まれます。
葉酸は偏食すると不足してしまうため、野菜や豆類、魚介類などをまんべんなく摂るようにします。
ビタミンB12は、動物性食品に含まれます。
また、納豆や味噌といった大豆由来の発酵食品からも、ビタミンB12を摂取することが出来ます。
飽和脂肪酸は完全に悪ではない
マインド食では、飽和脂肪酸の摂取は動脈硬化を引き起こし、認知症を発症しやすくなると謳っています。
ところが、ココナッツオイルは、認知症予防に良いと言われています。
ココナッツオイルは認知症予防に良いと言われています。
ココナッツオイルに含まれる脂質の殆どは飽和脂肪酸です。
中鎖脂肪酸が6割程占めており、長鎖脂肪酸が3割弱程です。
ココナッツオイルには、血中のケトン体濃度を上げる働きがあります。
体内のブドウ糖が枯渇すると、代わりにケトン体がエネルギーとして利用され、脳の栄養として供給されます。
ココナッツオイルには、長鎖脂肪酸のカプリル酸も含まれており、カプリル酸も脳の栄養としての役割があります。
ただし、脳の栄養として有益になるには、長鎖脂肪酸を過度に摂らないことです。
元々、豚や牛などの哺乳類の体温は、人間より高いことから、大量摂取は血液の粘度を上げることに繋がります。
飽和脂肪酸の摂りすぎは体にデメリットとなりますが、更に認知症の発症リスクの高いものがあります。
飽和脂肪酸より危険な油
マインド食では、赤身肉、バター、チーズ、揚げ物、菓子類を避けるべき食品としています。
この中で、特に注意しなければならないのが、揚げ物と菓子類です。
これらに含まれる油は、殆どと言っていい程、体に悪いものが使われています。
その代表的な油がトランス脂肪酸であり、高温処理された油、焼き菓子、ドーナツなどの揚げたお菓子に含まれます。
そのほかにも、ラクトアイス、安いチョコレート、スナック菓子、インスタントラーメンなどにも使われています。
飽和脂肪酸は血液中のLDLコレステロールを増やすと言われていますが、それ以上にトランス脂肪酸は危険です。
トランス脂肪酸は、LDLコレステロールを増やし、HDLコレステロールを減らし、細胞膜をもろくする上に、血液を酸化させて血管を硬化し、循環器疾患のリスクを上げます。
当然、血管が硬化すれば、血流が滞り、脳に栄養が行きわたりにくくなります。
オメガ3脂肪酸などの有益な脂質の働きを阻害してしまうため、せっかく摂った良質な油の働きを台無しにしてしまいます。
トランス脂肪酸が含まれている商品を見極める時に、マーガリン、ショートニング、植物油脂が含有されているものは、特に気を付けているかと思います。
しかし、トランス脂肪酸が含まれている商品はこれらにとどまりません。
商品によっては、食用加工油脂と表記されている場合もあります。
食用加工油脂に該当するものには、マーガリン、ファットスプレッド、ショートニング、精製ラード、食用精製加工油脂、加工油脂が挙げられます。
これらトランス脂肪酸は、循環器疾患のリスクを高めることから、脳血管疾患の発症に至ることで、脳血管性認知症の発現に繋がってしまいます。
更に、揚げ物は、トランス脂肪酸だけではなく、加熱処理されたリノール酸から生成されるヒドロキシノネナールによって、細胞死を起こし、海馬を委縮させ、アルツハイマー型認知症を引き起こしてしまいます。
ヒドロキシノネナールの詳しいことは、過去動画をご覧になって下さい。
このような油は、原材料の安全性も問題になっており、遺伝子組み換えや、パーム油に使用されているBHA、BHTのことが懸念されます。
お菓子は危険要素盛り沢山
菓子類は、特に市販の洋菓子の多くにトランス脂肪酸が含まれ、市販のお菓子には白砂糖が当たり前のように使われています。
更にラクトアイスになると、白砂糖より危険な果糖ブドウ糖液糖が使われています。
マインド食で避けるべき食品の中に、清涼飲料水が含まれていませんが、清涼飲料水の多くは果糖ブドウ糖液糖が使われています。
白砂糖や果糖ブドウ糖液糖が良くないのを聞いて、甜菜糖やメイプルシロップ、黒糖などで代用する人もいますが、これらは、白砂糖や果糖ブドウ糖液糖を使うよりベターですが、あくまでも甘味料なので、摂りすぎれば健康に害を及ぼします。
白砂糖、果糖ブドウ糖液糖は、血糖値や中性脂肪を上昇させることから、日常的に摂取すれば、脳梗塞を起こすリスクも高くなります。
このようなCI値が非常に高い食品は、ビタミンB1を著しく消耗します。
しかも、現代人は、白砂糖や果糖ブドウ糖液糖から沢山糖分を摂っているにも関わらず、ビタミンB1が不足しています。
また、ミネラルの中でも、マグネシウムの不足が深刻です。
このような状況に置かれていることは、認知症にかかるリスクも、それだけ高いことになるのです。
アルコールの多飲も、ビタミンB1を著しく消費します。
MIND食では、ワインもお勧め食品の一つとして挙げられていますが、アルコールの飲みすぎという点からも、1日1杯程度にとどめておきましょう。
極端な減塩は危険
MIND食は、DASH食と地中海式食事法の両方の長所を取り入れた食事療法であるものの、高血圧対策が却って裏目に出ることがあります。
それは、極端な減塩です。
水分は体内のナトリウム量によって調節されます。
ナトリウムが少なくなれば、体内の水分も少なくなります。
血液の量が少なくなると、脳への栄養や酸素の供給量が少なくなる上に血の巡りも悪くなります。
この時、血圧は下がり、頭がぼーっとして冴えなくなります。
これが認知機能の低下に繋がります。
しかし、精製塩を摂りすぎれば、脳血管疾患の発症リスクになります。
塩分は摂りすぎもよくありませんが、不足も却って認知機能の低下を招きます。
まとめ
マインド食では、赤身肉、バター、チーズ、揚げ物、菓子類を避けるべき食品としています。
マインド食と併せ、発酵食品の摂取、油の選び方に気を付ける、体に悪い糖分を控える、アルコールの多飲に注意する、日光浴、適度に体を動かすことが、認知症の予防に良いと言えます。
認知症を予防することは、人生の決定権を保持することに繋がるのです。