寿命には「平均寿命」と「健康寿命」があります。
平均寿命とは一般的に言われる寿命を指し、生まれてから死に至るまでの余命を言います。
一方、健康寿命とは「一生の中で健康的で自立した生活を送れる余命」を言います。
2000年にWHOが「健康寿命」を提唱しており、延命よりも一生のうち健康的で自立した生活を送れる期間をいかに伸ばせるかについて着目していますが、現実はそうでもありません。
2016年のデータによりますと、男性の平均寿命が80.98歳、健康寿命が72.14歳、その差は8.84歳、女性の平均寿命が87.14歳、が健康寿命が74.79歳、その差が12.35歳です。
このうち男性は約9年間、女性は約12年間、寝たきり生活を余儀なくされています。
人生100年時代の真実
また、現在は「人生100年時代」と言われています。
病院や介護施設を経験してきて感じたことは、明治生まれ、大正生まれの方が割と自立した生活を送れている方もいるのです。
この方達は当然ながら高齢なので、若者のような機敏な動きは出来なく、車いすやシルバーカーを用いてる方も多いですし、年齢相応の衰えはあります。
それでも身の回りのことは自分で行うことが出来、意思決定も出来ます。
中には100歳を過ぎても、このように自立した生活を送れている人もいました。
流石にこの年齢になると歩ける人は滅多にいませんでしたが、それでも自力で食事を食べることが出来、手先の作業は自分で行えていました。
ところが…
明治生まれや大正生まれとは違い、昭和生まれは飽食な時代を生きてきたから前者より更に長生きするのではないのかと思われるかもしれませんが、実は全く違うと感じています。
入院患者や施設の利用者の年代層は十数年前から昭和の世代に移行しています。
昭和生まれの人が入院したり入所したりすると、年齢が若いから先はまだ長いだろうと思っていましたが、実は早くして亡くなっている方も多いのです。
だからと言って昭和の世代がすべて弱いというわけでもありません。
その一方で70歳位になっても現役で働いている人もいますが、それでも平均寿命より若い年齢でお亡くなりになってきているケースを何度も見てきました。
しかも、90代の親よりも70前後の娘の方が先にお亡くなりになった実例もあります。
更に若い世代では20代で健康診断に引っかかっているという信じられない事態が起きています。
これは15年以上前からありました。
20代のうちは身体に多少良くないものを食べても健康診断で異常値が出ることは殆どないのですが、それでも異常という結果が出るのであれば、相当不摂生な食生活を送っているということが伺えます。
2000年頃、テレビで「お菓子を食事として食べている20代の女の子」のことを取り上げていました。
こんな砂糖たっぷりのお菓子ばかり食べていたら糖尿病に罹るのではなのかと思って見たところ「血液検査は正常でした」とのことでした。
彼女は調理師の免許を持っているから健康でいられるということです。
いや、違うでしょ?
まだ若いからなんじゃ…
あれから5年…
「最近20代の子が健康診断に引っかかっているのよ」
これは、当時働いていた職場の近隣の事業所の管理栄養士の言葉でした。
健康診断に引っかかった若いスタッフに、栄養教育をするように言われていたのです。
当時は今のように健康に関心のある時代ではありませんでした。
「長生きしたくないから…」と言われればそれまでかもしれません。
仮に脳梗塞を起こしてしまったものの命に別状がなかった場合は、下手をすれば若いうちから身体にハンディキャップを背負って生活を送るようになります。
この負担は本人だけではなく、周りにも介護負担という形で肉体的にも精神的にも疲弊させてしまいます。
大切なのは健康維持のためのシステムを発揮できる身体を作ること
ここで伝えたいのは20代のうちから人間ドックを受けましょうということではありません。
現在は病気の予防に着目しています。
健康診断を受けて、「異常」又は「境界値」との所見が出たら、境界値では特定保健指導を、異常と診断されたら治療を勧められます。
健康診断の基準値は年々厳しくなってきており、かつては最高血圧の基準が180だったところを140に引き下げ、現在では130となっています。
日本人の食事摂取基準2020年版では、塩分摂取量が男性で7.5g未満、女性が6.5g未満と制定されています。
ただ、高血圧の基準は学会によって様々であり、人間ドック学会では高血圧の基準を140としています。
不摂生な食事を遅れば異常の診断結果が出るリスクも高くなります。
そうなると真っ先に薬を処方されるケースもありますが、薬物療法はその症状を抑える働きがあるものの、根本的な治療をいたしません。
寧ろ、副作用によって他の機能に支障をきたしてしまいます。
血圧降下剤は認知症や脳梗塞の原因となるから、寧ろ危険という声もあります。
このような生活習慣病は不摂生な食生活によるものも大きいですが、加工食品や精製された食品の摂取に加え、更にストレスを抱えやすい環境が起因していると言えます。
2020年の食事摂取基準の改定がなぜこのようになったのかというと、塩の選び方や加工食品の摂取によってナトリウム過多なうえに、電解質のバランスがナトリウムに偏っているという背景があると考えられるでしょう。
大事なことは無暗矢鱈と医療機関に依存することではなく、食習慣や生活習慣を早いうちから改めることです。
これは病院や施設で見てきた患者様や利用者様を見てきて感じたことです。
人間に限らず、命ある生き物は必ず死を迎えます。
死を迎えるころになると、これまで食欲のあった人でさえも、食欲が減衰します。
これはごく自然なことなのではないのでしょうか。
ある施設では、そのような方に「食べたくない食事を食べさせるのは虐待だ。本人が食べたいものをもっとよく調べて、何とかして食べさせてほしい」と無理な要求をされたことがありました。
スタッフが5~6人でその利用者様を囲み、食べてもらおうとするのですが本人は著しく拒否をします。
ただでさえ大勢の人に囲まれてプレッシャーをかけられている上に、何も口にしたくないのに無理やり食べさせられている本人にとって、これは拷問以外の何物でもありません。
ここまでの無理強いをしなくても、経管栄養や中心静脈栄養という選択をとる場合もあります。
これによって命が繋がれたものの、長期間に及ぶ寝たきり生活を送るという、これまた悲劇に遭遇します。
寝たきりの話をすると
寝たきりになって経管栄養(鼻やお腹から管を通して栄養補給をする方法)や点滴(注射)までして長生きはしたくない
このような返答が返ってきます。
健康寿命の期間が終えて死に至るまでの期間が長ければ長いほど、この苦痛の中で生きる期間も延長します。
延命治療という状況です。
誰もが出来るだけ健康寿命を延ばしたいと願っています。
人は幾つで亡くなるか予測がつきません。
生涯の中で健康的で自立した生活が送れる期間が長ければ長いほど良いに越したことありません。
こうした身体を作るには、出来るだけ薬剤に頼らず、健康的な食生活や生活習慣を送り、なるべくストレスをため込まないことです。
正しい食習慣や生活習慣は人が本来持っているホメオスタシス、免疫力、自然治癒力を高めていきます。
これらの健康維持に関わるシステムは驚異的な身体の仕組みといっても過言ではなく、これが身体の凄いところなのです。
ただ、健康法には個人差があり合う合わないがあるものです。
食事や栄養は、アレルギーと過剰摂取に気を付けていれば副作用のような症状を呈しない安全さがあります。
栄養で治療を行った場合、それほど身体に悪影響を及ぼしません。
身体は正直です。身体は自然であればあるほど喜ぶものなのです。