超高齢化社会に伴う摂食嚥下障害の問題

高齢化社会が進み、介護を必要とする高齢者等が住み慣れた地域で尊厳ある生活を可能な限り継続出来ることを介護保険制度では謳っております。

2025年には団塊の世代が後期高齢者となり、在宅の方に向けての嚥下食のニーズが更に高まっていくでしょう。

とはいってもただでさえ自宅で献立を考えて食事を準備することは結構大変なことです。





 

キザミ食を廃止している病院や施設も

高齢者の咀嚼・嚥下が困難な方向けの食事となると一層手がかかってしまいます。

一度調理したものを一つ一つ刻んで提供することはとても手間がかかります。

品数ごとに包丁でたたき、その都度包丁、まな板を洗浄するので、あまり衛生的ではありません。

ここ数年から、一部の病院や施設がキザミ食を廃止しているのも、キザミ食はメリットよりもデメリットがはるかに多く、見た目が良くなく食欲が低下する上、上記のような手間や衛生面もデメリットの一つとなっております。

また、キザミ食を廃止し、ソフト食などの原型を留めた方法での食事提供方法に変えた方が残渣量が減っているのも事実です。

 

キザミ食はデメリットが多い

常食からキザミ食に変更する理由として、「肉類が硬くて食べられないから」「根菜類が硬い」といったものが挙げられます。

肉や根菜類の他に、かまぼこ、こんにゃく、ピーナツ、いか、たこ、海藻類が挙げられます。

ところがこれらの食品を刻んだところで、結局硬いまま細かく刻まれるので、咀嚼する回数は減るものの、せっかく苦労して刻んだ食品は口腔内に残ってしまいます。

そうなると食品が歯と歯の間に挟まり、気付かず放置してしまうと、口腔内に菌が繁殖してしまいます。

歯によって更に弱らせてしまい、咀嚼機能の衰えに歯車をかけてしまいます。

そして口腔内に残った汚れた残渣が誤って気管に入ってしまうと誤嚥性肺炎を起こしてしまいます。

また、キザミ食は飲み込む時に喉に残渣が残りやすく、これも誤嚥性肺炎の原因となってしまいます。

一度肺炎を起こしてしまうと、肺炎による痰の絡みや発熱症状を起こすなどして、症状が出る度に食事を中止することが度々起こります。

これを繰り返すことによって、当人は徐々に弱ってしまい、最終的に口から食べられなくなってしまうのです。




 

介護用食品の活用と食塊形成

現在、咀嚼、嚥下困難な方向けの介護食品が開発され、最近ではバリエーションが豊富になってきています。

実際、刻んだかまぼこと介護食の練り製品を食べ比べたことがありますが、刻んだかまぼこより介護食用の練り製品の方がはるかに安全に食べられました。

スマイルケア食やユニバーサルデザインフードの嚥下スケールでは「歯茎で潰せる硬さ」、摂食嚥下リハ学会分類2013では「嚥下調整食4」に該当するものですが、健康な方では舌で十分潰せる硬さで、その後飲み込んだ時も喉をスムーズに通りました。

それではどうして細かく刻んだものが食べづらく、形のままのものが安全に食べられるのでしょうか?

食事を口に入れたら、しばらく噛んで潰してそれから飲み込むという行為を普段何気に行っています。

歯で砕いてすり潰し、顎や舌を使いながら唾液と一緒に食品を練りこむという一連の作業が行われます。

つまり、口腔内では食事を安全に飲み込むための準備を行っているのです。

この食品が口腔内で噛んですり潰して練りこまれた形状となったものを「食塊」といいます。この食塊を口腔内で作ることを「食塊形成」といいます。

 

口から食べることを支えることはその人の尊厳に

市販の介護食品では予め「食塊形成」された状態で製造されているので、刻む行程がなくても、形のまま安全に食べられるのです。

また、食品の原型をとどめているので、見た目によって食べる意欲の低下の原因になったり、細かく刻むことによって食材に原型が分からなくなり、何を食べているのか分からないといった問題も解消されます。

最終的には経口摂取期間と健康寿命が延びることとなり、その人の尊厳へと繋がっていきます。

 
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