細胞内に溜った不要な蛋白質を再利用して、細胞内を大掃除する働きをオートファジーと言います。
このオートファジーによって体が飢餓状態になった時に、体内の蛋白質をアミノ酸に分解し、エネルギーとして生命が維持されます。
更にオートファジーは、有害物質から体を守り、恒常性の維持を図ります。
飽食となった今現在では、飢餓状態に陥ることは殆どなくなりました。
このオートファジーというメカニズムを活用すると、美肌効果や脳機能の向上、臓器の健康の維持に期待があります。
それは、先々の人生も不自由なく過ごせることに繋がると言えます。
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オートファジーのメカニズム
細胞内には蛋白質やミトコンドリアが多く存在しています。
細胞の寿命には限りがあり、次第に古くなっていきます。
また、細胞そのものがダメージを受けることがあります。
このように細胞が古くなったり、損傷すると、劣化した細胞が体内に増えることとなり、体に悪影響を及ぼしてしまいます。
これらの不要物が発生した時に、オートファゴゾームの素となる物体が現れます。
このオートファゴゾームの素となるものが不要物を包み込み、オートファゴゾームとなります。
オートファゴゾームは二重の膜で包まれた構成となっています。
オートファゴゾームはリソソーム、或いは液胞と融合します。
リソソームと融合した時に、リソソームの分解酵素によって不要物を分解し、液胞の場合はオートファゴゾームの内側の膜であるオートファジックボディーが液胞内に遊離します。
そのあと、オートファジックボディーは、液胞内の酵素の働きによって分解されます。
また、このリソソーム自体も障害を受けることがあります。
この時もオートファゴゾームによってリソソームが包み込まれ、細胞内に分解酵素が広がらないようにガードします。
これが細胞内で行われる蛋白質をクリーニングする過程です。
また、オートファジーは、食事が摂れない時に細胞自身が分解して、その蛋白質をリサイクルする役割も担っています。
感染から身を守る
オートファジーと似たような働きに、ファゴサイトーシスというものがあります。
ファゴサイトーシスとは、好中球やマクロファージといった食細胞による細菌やウィルスを取り込んで処理する働きのことを言います。
これらの食細胞が取り込んだ細菌やウィルスは、ファゴゾームというものに包んだ形で取り込まれます。
ファゴゾームはリソソームと融合してファゴリソソームとなり、内部の異物を分解します。
しかし、中にはファゴゾームを破壊する菌も存在し、これらは、食細胞に取り込まれることから逃れ、細胞質内に感染しようとします。
このとき、オートファジーが働き、細胞質内に侵入してきた菌を捉えて分解します。
つまり、オートファジーは、感染から身体を守る働きもあるのです。
オートファジーによって得られるメリット
オートファジーによって得られるメリットは多種多様であり、臓器によっても様々です。
飢餓から守る
絶食して、体内のエネルギー源が枯渇してしまうと、糖新生が行われます。
この糖新生として用いられる蛋白質を利用する際に、不要となった蛋白を活用することによって、体を飢餓から守ります。
癌予防
オートファジーには腫瘍を抑制する働きがあると言われ、癌を予防するとのことです。
癌細胞は正常な細胞の遺伝子のうち、2個から10個までの細胞に、傷が付くことにより発生します。
このように異常細胞が出来た場合、異常細胞を分解してリサイクルすることによって腫瘍を抑制すると言われます。
ただし、これにはビタミンDの摂取が必要となります。
ビタミンDは癌細胞のリサイクルを抑制すると言われます。
紫外線というと老化という嫌なイメージがあるかと思いますが、時々日光浴をして、ビタミンDを摂り入れましょう。
認知症予防
細胞の不要物がなくなると、細胞の代謝が円滑に行われ、細胞の機能が修復されます。
これはサーチュイン遺伝子が活性化された状態であり、細胞の修復や生まれ変わりによって、オートファジーが脳機能の向上や認知症予防にも有効的と言える部分です。
この働きは、細胞内のミトコンドリアを増やすことにも繋がります。
脂質代謝促進
ミトコンドリアが増えれば、脂質代謝が円滑に行われます。
ミトコンドリアは年齢に伴って数が減少することから、年齢を重ねると痩せにくくなってしまうのですが、サーチュイン遺伝子の活性化が脂肪燃焼しやすい体を維持すると言えます。
全身を健康に保つ
細胞の新陳代謝が活性化すれば、細胞のターンオーバーも早まるため、全身を若く保つことが出来るようになります。
そして、体のあらゆるところの老廃物排泄を促進し、腸の細胞も修復されることから、これらの不要物が便として排出されます。
腎機能維持
オートファジーでは特に腎臓は影響を大きく受けます。
特に、腎臓には傷ついたミトコンドリアが存在します。
腎臓には老廃物を尿として排泄する働きと、体にとって必要なものを再吸収させる働きがあります。
この必要なものを再吸収するために、沢山のエネルギーを必要とします。
このエネルギーはミトコンドリアから生み出されます。
ところが、このエネルギー生成過程において多くの活性酸素を発生させてしまうのです。
活性酸素の過剰産生は、体を酸化させるだけではなく細胞をも老化させてしまいます。
それ故に、ミトコンドリア自身も老化してしまうのです。
オートファジーは老化したミトコンドリアを分解し、分解したものをクリーニングします。
このようにオートファジーは腎機能の維持を図るのです。
血管細胞を若返らせる
血管細胞は絶食によって機能が高まり、柔軟性と強靭性を増します。
絶食によって血液が浄化すると、血栓が溶解されます。
そのため、血液の循環が更に円滑になり、栄養素の運搬が円滑になる上に、全身の組織の機能を向上させることにも繋がります。
オートファジーを発動させるには?
オートファジーを発動させるには、断食が一番手っ取り早いです。
断食を行う場合は、断食道場に行って専門家のサポートを受けることを推奨します。
断食の際は、少なくとも16時間は断食をします。
この空腹状態によってオートファジーの働きが発動し、脂肪燃焼や細胞の新陳代謝が行われるようになります。
オートファジーを効率的に行うにはレスベラトロールを摂り入れます。
奈良女子大学では次のことを述べています。
正常ヒト臍帯静脈由来、血管内皮細胞に、生理的条件により近い濃度のレスベラトロールを6日間処理した場合、SIRTワンと共に、イーエヌオーエス遺伝子の発現が誘導されること、さらに、生体の恒常性維持に関わるオートファジー関連遺伝子、活性酸素消去や抗炎症作用に関与する遺伝子の発現が誘導されることを見出した。これらの遺伝子群の発現変動が、レスベラトロールの心血管系での効果に関与している可能性がある。最近、オートファジー活性化に、PPARα活性化やシーエーエムが関与することが報告され、前述のレスベラトロールのシーエーエムピーを介するPPAR活性化と関連していると予想される。
この研究から、レスベラトロールを継続して摂取した場合、生活習慣病予防に寄与していることを明らかにしています。
レスベラトロールはサーチュイン遺伝子の働きを活性化させます。
サーチュイン遺伝子は、オートファジーを指示するように働きかけることによって、オートファジーを促進させます。
レスベラトロールは、ピーナツの皮、ワインパミス、赤ワイン、マルベリーなどに含まれています。
オートファジーを抑制する原因
しかしながら、オートファジーを阻害する要因もあります。
それは暴飲暴食です。
更に、加工食品、ジャンクフード、白砂糖やトランス脂肪酸といった体に悪いもの、汚染された食品の摂取によっても、オートファジーが抑制されてしまいます。
動物性食品の過剰摂取にも気を付けましょう。
基本は、まごわやさしいに基づいた栄養バランスのとれた食生活を心がけることです。
オートファジーの注意点
これまでオートファジーのメリットについて話してきましたが、いくらダイエットやアンチエイジングに良いからといっても、やり過ぎは身体に弊害をもたらします。
オートファジーの行程においてオートファゴゾームがリソソームと融合する段階までは比較的早いスピードで行われます。
しかし、リソソームの数は限られています。
リソソームのキャパシティーがオーバーすれば、オートファジーとしての働きが停滞してしまいます。
この時、オートファジーによって分解が間に合わなくなった不要物が蓄積されてしまいます。
更に、生活習慣病に罹っていると、細胞内に不要物が溜まりやすくなり、このような自体を招きやすくなります。
オートファジーが停滞すると、腎臓を傷めてしまいます。
まとめ
オートファジーには次のメリットをもたらすことを述べてきました。
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オートファジーを上手く利用するのであれば、暴飲暴食をせず、身体を健康に保つための努力が基本となります。
生活習慣病の予防と合わせ、普段から、まごわやさしいを基本とした栄養バランスが摂れた食事を心がけた上で、空腹時間を上手に活用しましょう。
それは、美肌効果や脳機能の向上、臓器の健康の維持に繋がる上に、先々の人生も自由に過ごせる明るい未来を手に入れることに繋がるのです。