フィチン酸は、ビタミンB群のイノシトールから出来るリン酸化合物の一種です。
フィチン酸が含まれる食品というと、まず思い浮かぶのが「玄米」です。
玄米は白米とカロリーが変わらないにも関わらず、ビタミン、ミネラル、食物繊維が豊富で、GI値も低く、フィチン酸によるデトックス効果が期待されている食品です。
しかし、そのフィチン酸があまりにもデトックス効果が高い為にミネラルを排泄してしまうことから、玄米が危険な食品というレッテルを貼られる要因となってしまいました。
フィチン酸は身体にとってデメリットなものなのか、見ていきましょう。
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フィチン酸の働き
フィチン酸の働きには以下のものがあります。
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強いキレート作用がある。
フィチン酸には強いキレート作用があります。
キレート作用とは、身体に有用な栄養素の吸収効果を高め、有害物質の排泄を促す作用を言います。キレート作用のある食品は玄米だけとは限りません。
大豆等の豆類や胡麻などの種実類、野菜類、海藻類の中にもフィチン酸を含む食品は多く存在しています。
フィチン酸はこれまで有害物質として見られてきましたが、近年では、満腹中枢に影響を与えて食欲を抑制する働きが知られ、更に強力な抗酸化作用、抗癌作用が注目されるようになりました。
抗酸化作用
抗酸化作用は、体内に活性酸素が過剰に産生することを抑制する為、過酸化脂質の産生を抑制することによって動脈硬化の予防及び心疾患や脳血管等の生活習慣病予防効果に役立ち、癌予防やアンチエイジング効果があると言われます。
抗癌作用
フィチン酸には癌細胞の増殖を抑える働きがあると言われます。
更に抗酸化作用や抗癌作用やキレート作用も抗癌作用に有効的と言われることから、更に抗癌作用に期待があるそうです。
解毒作用
フィチン酸は汚染物質や有害物質と結びつくと水に溶けにくい状態になります。
汚染物質や有害物質が不溶性となることによって、吸収を妨げ排泄を促すようになるので、解毒効果に期待があります。
血液凝固抑制
フィチン酸には血液凝固抑制作用及びコレステロール、中性脂肪を低下させる働きがあると言われます。
これらの作用によって高血圧や脂質異常、血栓予防、血液凝固、動脈硬化、心疾患等の循環器系疾患の予防に役立ち、浮腫の改善にも良いとされています。
尿路結石阻害
フィチン酸は尿路結石に良いと言われますが、この結石とはリン酸カルシウムやシュウ酸カルシウムによるものと言われます。
シュウ酸カルシウム結晶は、尿路結石の成分としては最も多く結石症を示唆する所見となることがあります。
フィチン酸にはこのカルシウム結晶の過剰な生成を抑制する働きがある為、尿中のカルシウム濃度を正常に保ち、尿路結石を予防するということが考えられます。
この他にも、フィチン酸には歯垢形成抑制効果があると言われています。
フィチン酸の毒性とは?
フィチン酸は通常、種子の中では鉄や亜鉛と結合した状態で存在しています。その為、その物質そのものは毒ではありません。
フィチン酸がミネラルと結合した状態のものを「フィチン」と呼びます。
実は玄米の糠に含まれると言われる「フィチン酸」とはフィチン酸とミネラルが結合した状態なので「フィチン」の方が正しいと言えます。
玄米は食べて体内で分解されることによってフィチンが分解されることによって「フィチン酸」と「ミネラル」となります。
この時にキレート作用が働き出すのです。
元々玄米にフィチンが含まれているのは、身を守る為に排毒作用を促す為であり、その作用強く出るのは生の状態なのです。
つまり、生で玄米を食べない限り、体内からの有用なミネラルが排泄されるということはないのです。
また、常識的な量を摂取していれば、有用ミネラルの過剰排出の心配は殆どないと思われます。
フィチン酸は栄養吸収を阻害するのか?
フィチン酸はミネラルを排出してしまうため、栄養吸収を阻害するという説については本当なのか?
この答えは半分本当です。
ビタミンC、有機酸、発酵食品は、フィチン酸の栄養吸収阻害を弱める働きがあることが判明されています。
つまり、偏食していれば玄米を食べても不調が改善されない一方、普段からバランスの良い食事を摂っている場合は玄米の栄養成分が吸収されやすくなるのです。
まとめ
フィチン酸の有害説は完全に嘘とは言い切れません。
その一方で優れた効果も持っています。
フィチン酸による栄養吸収阻害の影響を受けずに食品が持っている栄養成分を取り入れるには、普段から栄養バランスのとれた食事を摂ることが基本です。