栄養診断、栄養治療における世界共通言語のGLIM

GLIM基準は、2018年に提案された低栄養の診断と評価における国際的な標準であり、食事不足や疾患関連性低栄養を包括的に評価するために、世界の主要な臨床栄養学会の協力にて開発されました。

この基準にはいくつかのポイントがありますが、従来の食事摂取不足による低栄養に加え、医療施設における疾患関連栄養も考慮しています。

GLIM基準が策定されたのは、医療における低栄養の問題が世界的に認知されてきたことがきっかけであると考えられます。





 

GLIM基準策定に至るまで

GLIM基準策定前は、低栄養の世界的かつ標準的な診断基準が存在しませんでした。

超高齢化社会を迎えた日本では、低栄養の早期発見と早期栄養介入宇が重要な課題となっています。

GLIM策定前にも、アセスメントやスクリーニングツールが幾つか開発されてきました。

しかしながら、国際的な低栄養診断基準は定まっておらず、これが医療や福祉業界全体の課題となっていました。

欧州臨床栄養代謝学会、米国静脈経腸栄養学会、日本栄養治癒学会など、確国栄養学会のリーダーが集まり、世界的な診断基準が策定されたという経緯があります。

これは、医療における低栄養の問題が世界的に認知されたことが大きいと言われています。

 

GLIM基準の重要ポイント

GLIM基準のポイントは、以下のものが挙げられます。

  • GLIM基準は、低栄養診断および栄養治療における世界共通言語
  • 疾患関連性低栄養も考慮
  • 骨格筋の量と質を加味
  • 令和6年度診療報酬改定においてGLIM基準が標準化

GLIM基準は、低栄養診断および栄養治療における世界共通言語

GLIM基準導入により、世界共通の栄養管理が可能になり、全世界において栄養治療や低栄養の研究の更なる進歩の実現が期待されています。

疾患関連性低栄養も考慮

GLIM基準は、医療機関における疾患関連性得低栄養も考慮されているため、臨床の現場で使いやすい評価法であることから、実用性に期待があります。

骨格筋の量と質を加味

GLIM基準では、栄養評価方法で、初めて骨格筋の量と質が組み込まれるようになりました。これが栄養評価法の進歩へとつながっています。

令和6年度診療報酬改定においてGLIM基準が標準化

これは一つの例ですが、回復期リハビリテーション病棟入院料1について、GLIM基準が要件化されるようになりました。2~5についてはGLIM基準を用いることが望ましいとされています。

そして、リハビリ、栄養管理、口腔管理の質の向上を図るため、多職種協同で包摂的社会実現に向けて、GLIM基準を用いた入退院時の栄養状態の評価が行われることになり、リハビリテーション・栄養・口腔連携体制加算が新設しました。




 

GLIM基準の使い方とは?

GLIM基準の手順は大きく分けると3つのステップに分かれます。

  1. 栄養スクリーニング
  2. 低栄養診断
  3. 低栄養と診断された症例に対する重症度判定

スクリーニング

最初にスクリーニングツールを活用して、低栄養状態のリスクがある対象者の抽出を行います。

このスクリーニングツールに「MUST」「NRS 2002」「MNA®-SF(簡易栄養状態評価表)」が用いられています。

MUST

MUSTは英国静脈経腸栄養学会が作成した低栄養スクリーニングになります。

判定項目はBMI、体重減少率、急性疾患による栄養摂取への影響の3つであり、これらのスコアを算出した結果で判定します。

BMIのスコアは以下になります。

BMI スコア
20以上 0
18.5~20 1
18.5未満 2

体重減少率のスコアは以下に示した通りになり、過去3~6か月間の体重減少率を判定します。

体重減少率 スコア
5%以下 0
5~10% 1
10%未満 2

「急性疾患による栄養摂取への影響」は急性疾患の影響により、5 日間以上の栄養接種が阻害されていないかどうかを「なし」か「あり」の 2 段階で判定します。

急性疾患の影響 スコア
なし 0
あり 1

MUST の合計スコアは最低 0、最高 6 となります。スコアが低いほど低栄養リスクが低く、スコアが高いほど低栄養リスクが高いという指標になります。

GLIM 基準では MUST の合計点が 3 点以上の場合に栄養障害リスクありという判定に至り、2 つめのステップである栄養障害診断に続いていきます。

NRS 2002

NRS2002は、2002年に欧州臨床栄養代謝学会により開発されたスクリーニングツールです。

NRS2002は、初期スクリーニングと最終スクリーニングの2段階構成になっています。

初期スクリーニングに該当した場合は、最終スクリーニングに進み、栄養障害の重症度、疾病または外傷の重症度の2項目から合計を算出します。

初期スクリーニング

BMIは20.5未満であるか? はいorいいえ
過去3ヶ月以内に体重は減少しているか? はいorいいえ
過去1週間の食事摂取量は減少しているか? はいorいいえ
重篤な疾病の有無はあるか? はいorいいえ

最終スクリーニング

項目 スコア 基準
栄養障害の重症度 0 栄養状態正常
1 過去3ヶ月間で5%の体重減少、あるいは過去1週間の食事摂取量が通常時の50~75%に減少している
2 過去2ヶ月間で5%の体重減少、あるいは過去1週間の食事摂取量が通常時の25~50%に減少している
3 過去1ヶ月間で5%の体重減少、あるいは過去1週間の食事摂取量が通常時の25%以下に減少している
栄養障害の重症度 0 栄養状態正常
1 過去3ヶ月間で5%の体重減少、あるいは過去1週間の食事摂取量が通常時の50~75%に減少している
2 過去2ヶ月間で5%の体重減少、あるいは過去1週間の食事摂取量が通常時の25~50%に減少している
3 過去1ヶ月間で5%の体重減少、あるいは過去1週間の食事摂取量が通常時の25%以下に減少している

MNA®-SF(簡易栄養状態評価表)

MNA®-SF(簡易栄養状態評価表)は6項目で構成されている栄養スクリーニングツールです。

質問の選択肢別に点数が設定されており、特典が高いほど栄養状態が良好、低いほど低栄養のリア宇久が高いと判定されます。

項目 スコア 基準 備考
食事摂取量 0 著しい減少 過去3ヶ月間
1 中等度の減少
2 減少なし
3
体重減少 0 3kg以上 過去3ヶ月間の体重変化
1 不明
2 1~3kgの体重減少
3 なし
移動能力 0 寝たきり 移動、外出の可否
1 常時車椅子
2 離床しているが外出なし
3 外出出来る
急性疾患、強いストレス 0 あり 過去3ヶ月間
1
2 なし
3
認知、気分 0 重度認知症、鬱
1 中度認知症
2 問題なし
3
体格 0 19未満 BMI
1 19~21
2 21~23
3 23以上
0 31cm未満 CC
1
2
3 31cm以上<

低栄養診断

「MUST」「NRS 2002」「MNA®-SF(簡易栄養状態評価表)」いずれか、低栄養のリスクが判明されると、低栄養診断へ移行します。

低栄養診断基準は、表現型と病因の2つに分けられます。

表現型 病因
  • 意図しない体重減少
  • 低BMI
  • 筋肉量減少
  • 食事摂取量減少
  • 疾患負荷

表現型

意図しない体重減少

意図しない体重減少については、過去6か月以内に5%以上の体重減少があったか、又は6か月以上前に比べて10%以上の体重減少があったか、これが判断指標になります。

低BMI

BMIは70歳未満の場合18.5未満、70歳以上の場合は20.0が判定基準になります。

筋肉量減少

筋肉量は二重エネルギーX線吸収測定法(DXA)、インピーダンス法(BIA)、菓子周囲長等の身体計測による評価を用います。

GLIM基準は世界共通の評価という特性により、一律のカットオフ値を設定していませんが、筋肉量減少の評価については、年齢、性別、疾患等、氷菓対象の特異性を加味した上で、カットオフ値を用います。

日本人に向けたカットオフ値は以下の通りになります。

  • DXA…7.0㎏/㎡以下(男性)
  • DXA…5.4㎏/㎡以下(女性)
  • BIA…7.0㎏/㎡以下(男性)
  • BIA…5.4㎏/㎡以下(女性)
  • 下腿種胃腸…33㎝以下(男性)
  • 下腿種胃腸…32㎝以下(女性)

病因

食事摂取量減少
  • 1週間以上、必要エネルギー量が50%に満たない食事摂取量だった。
  • 2週間以上、食事摂取量の減少が続いている
  • 嚥下障害、下痢、便秘、短腸症候群、膵機能不全などの消化吸収を阻害する慢性的な消化器症状がみられる
疾患負荷
  • 急性疾患や外傷による炎症…感染症、やけど、外相など
  • 慢性疾患による炎症…心不全、COPD、リウマチ、慢性腎不全、癌、肝疾患など

重症度判定

重症度判定には、意図しない体重減少、低BMI、筋肉量減少が判定項目になり、基準値が下回ったものが1つでもあると重度低栄養と判定されます。

いずれも該当しない場合は中等度低栄養と判定されます。

意図しない体重減少は、過去6か月以内に10%以上の体重減少、又は6か月以上前に比べて20%以上の体重減少、いずれかに該当した場合が重度低栄養と判定されます。

低BMI、筋肉量減少はいずれも高度な減少が該当します。




 

まとめ

この基準を理解し、適切に活用することは、管理栄養士や医療従事者にとって極めて重要です。

GLIM基準の導入により、栄養評価の精度が向上し、患者の健康状態を改善するための基盤が整います。

また、主観的包括的栄養評価、簡易栄養状態評価表などのアセスメントツールを用いないため、細かい作業をカットし、時間の無駄を省くことが出来ます。

今回は管理栄養士業務としての視点からの内容となりましたが、身体の衰弱は要介護状態の原因になります。

筋力が残っていることは、体が自由に動かすことが出来る可能性も残っていることであり、摂食嚥下機能を保持することにも繋がります。

摂食嚥下機能が保持されれば、常食の摂取の継続に繋がり、栄養価の高い食事の摂取を継続することが出来るようになるのです。

 
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