塩は人体の体液の約0.9%を占めており、海水と同じ割合でミネラルが含まれる

塩は、料理の味付けに欠かせなく、醤油や味噌、マヨネーズなど、あらゆる調味料の塩味として活用されています。

現在、塩は高血圧や循環器疾患の原因になるため、厳しく制限がかかっています。

食事摂取基準2020年では、1日あたり男性が7.5g未満、女性が6.5g未満で制定されています。

DASH食では1日あたりの塩分量が6g、出来れば4gにとどめることが望ましいとされています。

1971年以降、精製塩が主流でしたが、現在では自然塩も店頭に並べられるようになりました。

健康維持を図るためには、塩の選び方は大きく左右されます。





 

塩の歴史

日本に塩が登場したのは、縄文時代後期から弥生時代初期と言われています。

川が流れる地域では塩が取りやすいというのは諸外国のことであり、多雨多湿の日本では、海に囲まれているにも関わらず、塩田で1年から2年かけて、塩を結晶化させる方法では塩を取り出すことが出来ませんでした。

その為、採鹹(さいかん)と呼ばれる濃い海水から濃い塩水を採取し、煎熬(せんごう)と呼ばれる濃い塩水を煮詰めて塩にする段階を経て、脱水する方法にて塩を取り出しました。

因みに、採鹹とは何かというと、塩田に海水を取り込み、濃縮させる方法です。大変手間のかかるものであり、天候による影響も受けやすいのです。

江戸時代初期になると、入浜式塩田が普及し、平釜製法によって作られるようになります。

1905年以来、塩の専売制度の実施が始まります。

1910年、塩田を廃止するための法律が施行されます。

1920年代には、沼井(ぬい)の改良やせんごう装置の普及により、平釜から工場生産化へと変化し、国内の塩の生産量が増大しました。

昭和初期に入ると、蒸気利用式塩釜、立釜が導入されます。

採鹹工程が入浜式塩田から流加式塩田に転換されます。

労力が10分の1に軽減され、生産力が2倍から3倍にアップします。

これが塩の過剰生産を招き、約2000ヘクタールの塩田が撤廃することになります。

1970年代に入り、制塩工程を全て採鹹工程からイオン膜方式に変換します。

これに伴い、約2200ヘクタールの塩田を撤廃しました。

当時販売されていた塩が、ミネラルの殆どがナトリウムで占められている精製塩でした。

後に、この塩専売制度が終焉に至ります。

1989年、大蔵大臣からたばこ事業など審議会に対し、今後の塩事業の在り方について訊問がなされました。

1995年に答弁が大蔵大臣に提出され、塩の製造、輸入、流通にわたる自由化が図られるようになり。1997年の4月に塩専売制度が廃止されるようになります。

これまで、店内に並べられていた塩は、これを機に、精製塩だけではなく、岩塩や海塩も並べられるようになったのです。

 

塩の種類

塩は大きく分けると、自然塩と再生加工品と精製塩があります。

自然塩

自然塩は天然塩とも呼ばれ、これには、海塩、岩塩、胡塩があります。

海水から作る塩は、昔ながらの製法にて、海水を天日で乾燥させる、釜で煮詰められることによって作られます。

この製造工程により、塩が本来持っているミネラルを含んでいます。

岩塩は、陸地に閉じ込められた海水の水分が蒸発し、結晶化したものであり、日本では取り出せません。

岩塩は不純物が多いので、掘り出した塩を一度溶かしてから異物を取り出し、それから煮詰める方法をとることが多いです。

岩塩は含まれるミネラルによって色が異なり、ピンク色や灰色、青などの様々な色があります。

海塩に比べるとミネラルの含有量が少なくなります。

味は海塩に比べると、塩気が利いています。

ステーキやカルパッチョとの相性が良いでしょう。

胡塩は、陸地に閉じ込められた海水がナトリウム層に変わる途中経過のものです。

こちらも日本では殆ど流通されません。

再生加工品

再生加工塩は、塩を一度精製塩にして、にがりや海水を添加して作れられます。

栄養組成は自然塩のように、複数のミネラルが含まれており、安価で手に入りやすいです。

精製塩

精製塩はイオン膜、立釜法にて、イオン膜を利用して濃い海水を作り、その後、煮詰めて結晶を作ります。

ナトリウム以外のミネラルが失われた塩であり、高血圧や循環器疾患の原因になっています。




 

塩の製造工程

塩を選ぶ時に、参考にする点は、種類の他にも製造工程があります。

これが全てというわけではありませんが、主な工程は以下のとおりになります。

  • 天日
  • 平釜
  • 逆浸透膜
  • 溶解
  • 焼成
  • 採掘
  • 粉砕
  • 立釜
  • イオン膜

天日

太陽や風などの自然の力を利用して水分を蒸発させて製造する方法です。

日射量が多く、乾燥した地域に向いており、日本では、この方法で塩を取り出そうとするのが困難です。

平釜

解放釜で煮詰めて塩の結晶を作る方法です。天日による製造が難しい日本では、この方法にて塩を取り出していました。

所謂、伝統的製法です。

商品を選ぶのであれば、天日または平釜と表記されているものを選びましょう。

逆浸透膜

逆浸透膜とは、水以外の不純物を通過させない性質の膜のことを言います。

この膜によって真水と鹹水(かんすい)に分けられます。

鹹水にすることによって、海水中の塩分を濃縮します。

溶解

結晶化した天日塩や岩塩を溶かして、濃い塩水を作ることを言います。

焼成

高温で焼いて、サラサラに仕上げる工程を言います。

採掘

文字の通り、塩を掘り起こすことであり、岩塩や胡塩が該当します。

粉砕

塩を粉砕して細かくし、ふるいにかけて、塩の大きさを整えます。

立釜

蒸気を加熱するための密封した容器です。

真空状態にして加圧することにより、結晶を作ります。

イオン膜

精製塩及び、再生加工塩の製造にて用いられます。

 

精製塩と再生加工塩の製造工程

精製塩

海水は、プラスのイオンとマイナスのイオンに分かれて溶けています。

イオン膜にはプラスのものとマイナスのものを通すものがあります。

イオン膜にプラスとマイナスを交互に並べ、電気を通すと、マイナスのイオンはプラス側へ、プラスのイオンはマイナス側へ移動になります。

濃い塩水と薄い塩水に分かれ、立釜にて濃い塩水から水分を蒸発させて塩の結晶を作ります。

結晶を乾燥させると、精製塩が出来上がります。

再生加工塩

再生加工塩は、海外から天日塩を輸入し、溶解によって不純物を取り除きます。

これを立釜にて。濃い塩水から水分を蒸発させ、塩の結晶を作ることで精製塩を作ります。

これを乾燥させて、炭酸マグネシウムを加え、固まるのを防ぎます。

 

商品を選ぶポイント

商品を選ぶのであれば、ミネラルバランスが整っており、尚且つ人工的な手が加えられていない自然塩が良いというのが結論です。

ミネラルの殆どがナトリウムである精製塩は、血圧を上昇させます。

ナトリウムは濃度に応じて水分を求めます。

水分が血管内に流動すると、血液が膨張するというメカニズムで、血圧が上昇します。

再生加工塩は、手に入りやすい値段でありながら、ナトリウム以外のミネラルも含まれています。

栄養組成という点では良いかもしれませんが、人工的に加工されたものは、化学組成は同じでも、体に与える影響は全くもって異なります。

食物から栄養を摂ることは、自然の恵みをいただくことでもあります。

ただ、自然塩は値段がそれ相応に高いので、ゆで汁として用いると、殆ど破棄してしまうので勿体ないでしょう。

料理の味付けとして直接口にするものに自然塩を用い、ゆで汁に用いるものは再生加工塩というようにすると良いしょう。




 

極端な減塩は却って身体を蝕む

高血圧や循環器疾患の原因とされている塩ですが、塩分制限がどのように体に支障をきたすのか、次のものが挙げられます。

頭痛、眩暈、倦怠感、認知症

水分は体内のナトリウム量によって調節されます。

ナトリウムが過剰になると浮腫みが生じますが、不足すれば血液量が減ってしまいます。

血液の量が少なくなると、脳に栄養や酸素の供給量が少なくなります。

その結果、頭痛や眩暈、倦怠感の症状を呈します。

また、極端な減塩は、血液量を下げることにより、血のめぐりが悪くなります。

その結果、脳に栄養や酸素が行きわたらなくなり、何となく頭が冴えないということがあります。

また、それが認知機能の低下にも繋がります。

脳梗塞

脳に血液が行かなくなると、脳虚血発作のリスクにも繋がります。

これが一過性のものであれば予後はそれほど心配ありませんが、虚血状態が長く続くと、脳梗塞に至る場合があります。

脳梗塞は塩分の過剰摂取が原因と言われていますが、実は、極端な減塩も脳血管のトラブルになるのです。

脳梗塞の発症リスクを高めている塩は、ミネラルの殆どをナトリウムが占めている精製塩なので、ミネラルバランスや製造方法を確かめた上で、塩を選びましょう。

食欲不振

細胞外液である血液、リンパ液、消化液には一定量のナトリウムが存在しています。

ナトリウムが不足すると、消化液が少なくなり、消化する力が弱まります。

その為、食欲減衰を起こし、低栄養や倦怠感に繋がり、熱中症をおこすことさえあります。

痙攣

大量の汗をかくと、水分と一緒にミネラルも体外に排出されます。

この時、ナトリウムが補給されないと、筋肉中のナトリウムが減少します。

塩は体に良くないからといって摂らないと、ナトリウムやマグネシウムを補給することが出来ず、無意識に筋肉が収縮することで痙攣が起こります。

冷え、癌

塩不足は、体液不足を招き、全身の血のめぐりが悪くなることを先述しました。

塩を摂りすぎると浮腫むのは、精製塩を摂った時であり、精製塩にはカリウムが殆ど含まれていないので、ナトリウムが蓄積して浮腫みを起こします。

それによって体が冷えてしまいますが、実は、塩を摂らないことも、体を冷やしてしまいます。

血のめぐりが良いことは、体温の保持に繋がります。

血のめぐりが悪ければ、これに伴い体温も下がります。

体温が下がれば、免疫力が大幅に低下します。

体温が下がるとともに、免疫力が低下すれば、癌の発症リスクが高くなります。

塩抜きの刑

昔、塩抜きの刑というものがありました。

一見健康的に見える塩抜きの刑は、極めて過酷な刑罰なのです。

極端な減塩をした症状については前述した通りです。

気力と失い、著しい倦怠感を与え、長期に渡る塩抜きをすれば、生命の危険に追われます。

特に最近の若者は、覇気がなく、声が細くて小さい人が多く、精神力の弱さが目立ちます。

食欲不振に追われれば、栄養失調に追い込まれ、身体は衰弱してしまいます。

気力が落ちてしまえば、生産性が減衰し、日常生活のあらゆる面でパフォーマンス低下を起こしてしまうのです。

 

身体にとって必要な塩分は自分の身体が一番知っている

1日あたりの塩分量は、日本人の食事摂取基準2020年版では、男性が7.5g未満、女性が6.5g未満とされています。

でも、これは精製塩を用いていることを前提として考えましょう。

精白された主食、精製塩を用いては、ミネラルの摂取量もおのずと少なくなります。

また、普段から、加工食品やジャンクフード、市販の甘いお菓子を食べていると、味覚が麻痺しています。

ジャンクフードや加工食品には精製塩が用いられており、塩気がしっかり付いているので、薄味の実践に切り替えることが困難です。

身体の感覚を取り戻すには何をすれば良いのか。

一番てっとり早いのが断食です。

断食によって身体をリセットすると、身体の感覚が鋭くなります。

また、天然だしを使うことを習慣にすると、これまで食べてきた化学の味に違和感を感じるようになります。

このように本来持っている味覚を取り戻すと、自分の身体がどのくらい塩分を求めているのか、感覚が解るようになります。

これを機会に、自然塩に切り替えます。

精製塩に比べると、自然塩は味がソフトです。

栄養素には、それぞれの味があります。

塩に含まれる主なミネラルは、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムですが、ナトリウムは強い塩辛さがあり、カリウムは酸味、カルシウムは甘味があります。

マグネシウムは複数種類があり、塩に含まれるのは塩化マグネシウムです。

この塩化マグネシウムは、にがりのことであり、苦みを感じる成分です。

どの味を体が求めているのか、例えば甘さを求めているのであれば、カルシウムが比較的多く含まれる成分を選ぶというように、その人に合った塩と選ぶ答えは、本人の身体がよく知っています。

料理に慣れない人は、塩加減が分からないことがあります。

身体に良いからと言って、一人分の料理、一品分に塩を匙1杯入れてしまっては、塩辛くなって当然です。

おかず一品、一人当たり一つまみを目安に味付けをして、足りないようであれば追加して当節し、自分の体が安心するといった加減が、適切な塩加減になります。

身体が、食べることによって自然の恩恵を受けていることに気づくことは、健康という幸せの始まりなのです。

 
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