ダイエットサポートや医療現場で活躍する「MCTオイル」

MCTオイルとはココナッツオイルやパーム油等から中鎖脂肪酸を抽出した油で、現在ダイエット効果に注目を集めている油です。

これまで飽和脂肪酸は身体に良くないものとして見られてきましたが、中鎖脂肪酸は消化吸収しやすく、体脂肪になりにくく、エネルギーとして消費されやすいことから、飽和脂肪酸は必ずしも悪い物ではないことが知られるようになりました。






 

長鎖脂肪酸は生活習慣病の原因

中鎖脂肪酸が注目されている一方、生活習慣病の原因となるのは長鎖脂肪酸です。

長鎖脂肪酸はその名の通り、脂肪酸の鎖が長く繋がっている為、消化・分解されにくい為、固まりやすい性質を持っている一方、熱に強いという性質もあります。

特にバター、ヘッド、ラードに含まれていますが、オリーブオイルやごま油、大豆油の食物油脂にも含まれています。

但し、植物油脂にはオレイン酸も含まれているので、適度な範囲であれば健康効果も期待出来る油であると言えます。

長鎖脂肪酸は過剰摂取傾向であり、過剰摂取は冷えや代謝低下、生活習慣病、肥満の原因となります。

 

ココナッツオイルとMCTオイルの違い

ココナッツオイルに含まれる中鎖脂肪酸はラウリン酸、カプリン酸、カプリル酸からなっています。

そのうちカプリン酸、カプリル酸を抽出してMCTオイルが作られます。

ココナッツオイルの中鎖脂肪酸の割合が約6割であるのに対し、MCTオイルは中鎖脂肪酸から出来たオイルとなります。

 

脂肪として吸収されない

中鎖脂肪酸は脂肪として吸収されないという性質があります。

肥満予防生活習慣病予防に適しているとともに、身体に害を及ばずにカロリーをアップさせるという性質を用いて、栄養補助食品や経管栄養剤等、医療現場で用いられています。

MCTは割と最近注目されていますが、医療の場においてはかなり昔から使用されてきました。

現在は様々な栄養補助食品に用いられていますが、腎臓食用の特殊治療食品には長く用いられています。

腎臓病の食事療法のうち慢性腎不全の食事療法は「高カロリー、低蛋白」でした。

しかし、蛋白質を主に含む食品もエネルギー源の一つであり、制限することによってエネルギー量が減ってしまいます。

そのエネルギー不足を埋める為にMCTを使ったゼリーやクッキーを補助的に使い、蛋白質が制限する中で適切なエネルギー量を提供するのです。

MCTはオイルとして用いられることや、パウダーとして製品化されたものがあり、料理の中に合わせることによって食事量を増やさずにカロリーアップを図るためにも用いられます。

現在では腎不全食は必ずしも高カロリーというわけではありませんが、腎不全の進行の度合いや患者様の体格、その他疾患や症状の面を踏まえて一人一人に見合った適切なエネルギー量が設定して栄養管理を行います。

 

 筋蛋白合成に関わる

中鎖脂肪酸にはBCAAと組み合われることにより、筋蛋白合成促進及び筋蛋白分解抑制に関する作用を効率よく発揮されるとされます。

体脂肪率を下げて痩せやすい身体を作る

BCAAはアミノ酸の中でも筋蛋白合成に関わるアミノ酸であり、そこに中鎖脂肪酸が持つ筋蛋白合成を促進させるホルモン「グレリン」を活発にさせることから、中鎖脂肪酸とBCAAの組み合わせはダイエットや太りにくい身体作りに良いと言われます。

これがMCTがダイエットに良いと言われている理由です。

中鎖脂肪酸はケトン体濃度を上げて体脂肪を燃焼させやすくすることもダイエットに良いと言われる要素の一つと言われます。

筋肉の成長

MCTの用途はそれだけではなく、筋肉を付けたいという男性や成長期のお子様、高齢者の筋力低下においても活用出来ます。

リハ栄養

医療や介護の現場においては、サルコペニアフレイル対策として注目がされています。

以前、リハビリ病棟における低栄養の患者の割合が他の病棟より多いことが問題視されました。

そして、入院されている高齢者に限らず、歳を重ねると筋肉量も減り身体を動かすことが億劫になり、更に栄養不足が輪をかけてサルコペニアフレイルの負のスパイラルに陥るということも問題視されています。

筋肉を付けるにはリハビリだけでは寧ろ身体が痩せてしまう為、エネルギーや蛋白質を始めその人に見合った摂取栄養量を設定し、BCAAやMCTを取り入れることによって筋力アップを図り、筋力アップの為のトレーニングを行ったり、入院患者が在宅復帰にて自立した生活を支援する為にリハビリを行うのです。

一部の病院ではリハ栄養に熱心に取り組んでいるところもあり、実際にリハ栄養によって足腰が鍛えられた高齢者の動画を拝見したことがありますが、その歩きぶりは高齢者と思えない位、颯爽とした歩きぶりでした。

摂食嚥下機能改善

実は嚥下機能低下も口腔機能の筋力低下によるものと見られるようになり、その人の嚥下機能状態に合った内容に加え、筋力アップを図った食事と口腔機能訓練を併用して、摂食嚥下機能を改善する取り組みが行われています。

この摂食嚥下機能は口腔や咽頭の問題だけではなく、全身の筋力低下も関与しています。

腎不全の方の創傷治癒

高齢者の創傷治癒にも活用されることもあります。

これはカロリーアップによる体重増加もその一つですが、腎機能低下により蛋白制限が必要となると、創傷治癒に必要な蛋白質が十分に摂れないことが危惧されます。

しかし、蛋白制限がされているものの、エネルギーをしっかり摂る事によって皮膚の症状が改善されたという事例も挙げられているので、蛋白制限のある方にはこのような形でも活用出来ることが言えます。

COPDの栄養管理

筋蛋白合成の効用で医療現場において注目されているのはCOPDの食事療法です。

呼吸器疾患はかつては栄養管理の必要性がある疾患ではありませんでしたが、近年になってから、蛋白質の異化亢進による激しいエネルギー消耗によるるい痩や二酸化炭素の排出量が栄養素に関連することから、COPDの栄養管理は重要なものとなっています。




 

認知症予防

MCTオイルはケトン体濃度を上げる性質があることから、脳のエネルギー源として利用されると言われます。

この為、脳細胞の破壊を抑え、アルツハイマー型認知症予防に期待があると言えます。

 

摂取上の注意点

MCTオイルを摂る際は、以下の点に注意しましょう。

お腹を壊す

ダイエットにも認知症にも効果が期待出来るMCTですが、その効果に期待して一度に沢山摂取してしまうとお腹を壊し、下痢等の消化器症状が見られることがあります。

肥満や胆石症を起こす

そして、基本的には油なので、摂り過ぎは肥満や胆石症を起こす原因にもなります。

脂肪制限時

また、胆石症や腸閉塞、膵臓疾患等、医師から脂肪制限が必要と指示されている場合は摂取を控えます。

 

まとめ

MCTオイルの摂取量の目安は1日小匙1杯程度 が適量とされています。

MCTを使った保健機能食品や栄養補助食品は多数販売されているので、商品の使用量を確認した上で摂取し、食事療法が必要な場合は医師や管理栄養士に相談すると良いでしょう。

MCTオイルは熱に弱い為、サラダや冷奴にかける、和え物に使う方法が適しています。

炒め物の場合は炒め用の油として用いないで、出来上がった時にMCTオイルを加える方法でも活用できますが、この方法は腎不全の食事療法でカロリーアップを図る為に用いられます。


 
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