凍結含侵調理法とは、広島県立食品技術センターが開発した酵素による食品軟化技術であり、凍結含侵法に関わる一連の基本技術は広島県の特許技術になります。
特許を受けるには広島県にライセンス契約するか、クリスタルコーポレーションのTORON(酵素)という商品を使用の上、TORONの代金を含む特許ライセンス料を払うことが条件となっています。
現在は食品企業、病院、介護施設、在宅向けの宅配弁当、通販の個食惣菜などで活用されています。また、冷凍食品としても流通されており、缶詰やドライフーズが開発中の段階です。
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食のユニバーサルデザインフードとして位置付け
凍結含侵法は食のユニバーサルデザインフードとも呼ばれています。
食品を形のまま軟らかく提供出来、軟らかさも好みに応じて調整することが可能です。
また、軟化の行程においてビタミンの喪失が殆どない為、ミキサーにかけたものを提供するより栄養価が高い状態を保持出来ます。
更に嚥下障害のある方でも、五感を刺激して食事を楽しむことが出来るので、理想的な高齢者食・介護食なのです。
介護食が必要な方はどんな方が対象になるのかといいますと
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このような方が対象となっております。
どのように活用されるのか
凍結含侵法に用いられるTORONとはどういう商品なのかと言いますと、野菜用2種類(緑野菜、緑野菜以外)と肉・魚・きのこ用の3種類があります。
TORONは天然由来酵素で、全て食品用として安全性が確認されたものを使用しています。
しかし、食材の中には酵素軟化処理に不向きなものもあります。
野菜類であれば、豆等の薄皮を含む皮、種子、繊維、種実類、きのこの軸、乾燥野菜は酵素軟化処理に向きません。
肉、魚では骨、筋(すじ)、脂肪のかたまり、海藻(乾物含む)が酵素酸化処理に向かないものになっています。
そうすると種実類や海藻類から栄養成分を摂取出来ないのではとの懸念がありますが、種実類に関してはペースト状を、海藻類は練り物を使うことにより、これらの食材から栄養摂取することが可能になります。
特に硬い野菜類は長時間加熱しないと軟らかくならないものや、長く加熱しても柔らかくならないものがあり、肉は繊維が残り、魚はパサつくという問題があります。
凍結含侵法はこれらの問題を解決し、野菜の色も栄養も残ったまま、見た目が良い食事を楽しめます。
食材の硬さを自由に調節が出来るので、酵素の使用量や減圧時間を変えることで硬さが変わります。
また、調理方法が真空調理法に基づいている為、調味料の使用量を抑え、塩分を抑えることも可能です。
調理方法
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最初に食材を下茹でし、その後真空パックして凍結します。
この時ブラストチラーがあると素早く冷ますことが出来るので効率的で、冷蔵庫で冷却する時のように食材を傷めずに済みます。
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一晩置いて解凍した後、酵素を加えて減圧します。
その後、冷蔵庫にて軟化させます。
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更に一晩置いたあと、加熱(失活)を行い、すぐ提供するものは盛り付け、冷凍保存する場合はブラストチラーを用いて急速冷凍し、使用する時に再加熱します。
凍結含侵法は10日~2週間のサイクルで仕込みを行うことが可能なので、作ったものをストックして必要な時に再加熱して提供することが可能です。
厨房スタッフの人員が多い日にストックを作り、日祝日のように出勤人数が少ない日にストックしたものを再加熱して使います。
ストックを活用すれば、当日の調理は常食だけで済むことも出来るのです。また、ニュークックチルにも対応可能です。
ソフト食よりメリットがある
凍結含侵法を導入し、本格的に稼働するには、作業工程や酵素の使用量及び食感をスタッフ間で検討を重ねていく為、長い月日を要します。
実際導入してみると、患者様や利用者様から好評の声があり、使用食材が目で見て認識しやすく、素材の形やにおいを感じながら食事を楽しめることに繋がり、残菜も減ったという声があります。
これはソフト食よりも優れている点です。
また、ソフト食同様に喫食時間の短縮や自己摂取の促進、キザミ食と違い食べこぼしが少なくなったという報告もあります。
粥食や分粥食の場合、特に分粥食提供の際は使用食材が限られてしまいます。
凍結含侵法を用いると、蓮根や筍のような硬いものがスプーンで潰せる位軟らかくなり、消化吸収が良くなるので胃や腸の中に残渣となりません。
このように消化吸収の面から、術後によるアッペ食の方でも提供可能となる為、主食の形態に関わらず、幅広い食品の利用が可能になります。
他にも沢山メリットがありますが、中には酵素の苦みが気になる方もいます。
そのような場合は、特に咀嚼嚥下機能低下が著しく見られる方には、舌で潰せる硬さに該当するムース食を用い、酵素の使用量が少なくて済む比較的軽度の咀嚼嚥下機能低下が見られる方のみを対象に導入する等、対象となる方の声を聞いた上で、介護食の提供方法を検討すると良いでしょう。