糖尿病ケトアシドーシスとは、糖尿病罹患中に発症する重篤な急性代謝障害です。
糖尿病ケトアシドーシスは、高度の血糖上昇がベースに存在していることから発症します。
血糖コントロールは膵臓のランゲルハンス島のβ細胞から分泌される「インスリン」というホルモンが重要な役割を果たしています。
インスリンには血液中の糖分を細胞内に取り込む働きがあります。
Table of Contents
インスリンの作用不足によって引き起こされる
インスリンの働きが不十分になると、血液から細胞内への糖分の移動が適切に行われません。
その為、血糖値が上昇するようになります。
しかし、細胞内にはエネルギー源として利用されるべき糖分がうまく運ばれなくなる為、飢餓状態に陥ります。
細胞が糖分をエネルギーとして利用出来なくなる為、脂質を代替えエネルギーとして利用するように身体は反応します。
脂質がエネルギーを処理することによって「ケトン体」が産生されます。
ケトン体は酸性を示す物質であり、ケトン体が大量に存在すると、血液のPHは酸性に傾きます。
この状況で細胞が飢餓に陥っているので、身体は糖分が足りていないと勘違いし、血糖値を上昇させます。
その為、一層血糖が上昇するようになります。
糖尿病ケトアシドーシスの症状は「高血糖」「ケトン体上昇」「アシドーシス」の症状を呈し、その根本原因は「インスリンの作用不足」にあります。
主にⅠ型糖尿病に発症しやすいがⅡ型にも
糖尿病には主にⅠ型糖尿病とⅡ型糖尿病があります。
Ⅰ型糖尿病は「インスリン依存性糖尿病」、Ⅱ型は「インスリン非依存型糖尿病」と呼ばれています。
Ⅰ型糖尿病の場合、ランゲルハンス島のβ細胞の障害によってインスリンが分泌出来ないことが原因により発症します。
Ⅱ型糖尿病は過食、偏食、運動不足、ストレス、喫煙等を原因とする生活習慣病により引き起こされ、インスリン分泌に異常が見られない糖尿病です。
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用不足によってⅠ型糖尿病において見られます。
ところが、糖尿病ケトアシドーシスが起因してⅠ型糖尿病が発症することがあります。
更に感染症や薬剤等が原因となって、血糖コントロールが上手くいかないこともあります。
またⅡ型糖尿病の場合であっても、糖質の大量摂取によりインスリンの作用が追い付かなくなり、血糖値が急激に上昇します。
Ⅱ型糖尿病の場合はこのような理由によってケトアシドーシスを引き起こす場合があります。
症状の進行が速い
糖尿病ケトアシドーシスの症状は急激に進行し、1日程度で症状を認めます。
ケトアシドーシスになると血糖が高度に上昇している為、喉の渇きを覚えるようになります。
喉の渇きに反応し、大量の水分を摂取するので多尿となります。
消化器症状も見られることがあり、吐き気、嘔吐、腹痛が生じる場合おあります。
症状が進行すると脱水症状を呈し、過呼吸、意識障害を伴います。
体内にケトン体に蓄積している為、呼気中にケトン物質のにおいがすることがあります。
糖尿病ケトアシドーシス時は血糖値が250㎎/㎗以上に上がります。
血液中でのケトン体においては「βヒドロキシ酪酸」と呼ばれる種類のケトン体が増加している場合は、糖尿病ケトアシドーシスの診断価値が高いと言われます。
また、ケトン体が体内で蓄積していることにより、血液が酸性に傾き、PHが7.3未満となっています。
まとめ
糖尿病ケトアシドーシスは生命予後にも関わる重篤な合併症です。迅速な治療介入が必要となるため、かかりつけの医師に診てもらうと良いでしょう。