真空調理法は、1979年にスウェーデンで始まり、フランスでジョルジュ・プラリュニヨリ、フォアグラのテリーヌの調理のために開発された調理法の一つです。
「焼く」「蒸す」「煮る」に次ぐ、第四の調理法とも呼ばれています。
真空調理法は、生あるいは焼き目を付けるなどの下処理を施した食材と調味液をポリエチレン製の袋に入れて真空密封し、TT(温度・時間)管理の出来る調理機で材料に応じた時間と温度設定をして調理します。
最高でも100℃を越えることはありません。
日本国内では1980年代からホテル、レストランを始め、病院給食などで広がってきました。
Table of Contents
真空調理は手間がかからない
真空調理の一番の特徴は手間がかからないことです。
真空調理法は生又は下処理を施した食材と調理液をポリエチレン製の袋へ真空密封し、炊飯器や湯銭で調理します。
ホテルやレストラン、病院給食等ではスチコンが設置されているので、スチコンで温度と時間を設定すれば、そのまま放置して調理出来る為、加熱中は他の作業に回ることが出来ます。
最近では、家庭用調理器具用として専用の調理器具が販売されていますので、高齢者の方にも安全に使って頂けたり、料理が苦手な人でも簡単に料理が出来るという利点があります。
真空調理のメリット
真空調理法には沢山のメリットがあります。
素材の味を活かせる
真空調理法には食材が本来持っている旨味や風味を逃がさない為、素材の味を活かし、料理を美味しく仕上げることが出来ます。
空気を抜いた状態の袋の中で調理、調味が行われるので、材料の旨味や風味が料理全体に均一になるように調理することが可能になります。
栄養成分を殆ど壊さない
真空調理法には食材の持っている栄養素を逃がさない働きもあります。
特に野菜類はボイルすると栄養素が3割未満に落ちてしまいます。
真空調理法を活用すると、9割栄養素を残すことが可能になるため、栄養分を無駄なく摂れるのです。
酸化防止
真空調理法には食材が空気に触れない為、酸化を防ぐことが出来ます。
酸化を防ぐことによって、食材の痛みを防ぎ、活性酸素の発生を抑えます。
また、酸素が触れないことによって食材の痛みを防止することが可能です。実は空気中の酸素が化学変化を起こしたり、好気性菌を増殖させてしまうことによって食材を痛めてしまいます。
つまり、酸素が触れないことによって料理が痛まない為、真空調理した料理は保存が効きます。
大量給食施設のオペレーション簡素化
病院や施設において、クックサーブという従来の調理方法を行っている場合は作り置きが出来ない為、毎日出勤人数を確保しなければなりません。
真空調理法を導入すれば、作り置きが出来るので、出勤人数が多い日にはまとめて調理して、従業員の希望休が集中して出勤人数が少ない日には真空調理されたものを再加熱するだけで提供可能というように、スタッフが働きやすい環境を作ることにも貢献しています。
更に、病院や施設、学校給食は食事の区分が細分化されています。
例えば病院では、一般食の献立に基づいて、粥食及び様々な種類の治療食を展開する為、副食を何種類か用意しておかなければなりません。
病院、施設、学校給食に共通することはアレルギー食です。
アレルギー対応食や治療食など手間になるものを予め作っておくことにより、早朝の食事準備の手間を省くことも可能になります。
咀嚼力の弱った方にも対応
真空調理法は原則的に低温で長時間かけて加熱調理を行います。
料理を軟らかく仕上げることが出来る為、高齢者や身体に障害を持っている理由で咀嚼機能が弱っている方に向いている調理方法であることが言えます。
調味料の節約
真空調理方法は、煮る、焼くなど一般的な調理方法より調味料の使用量を少なくして調理できる為、経済的です。
また、減塩が必要で薄味にしなければならない場合でも、真空調理で使われる塩分量は少量で済む為、美味しく塩分制限食を楽しむことが出来るのです。
衛生的
真空調理法は密閉された状態で調理されるので、二次汚染の心配がありません。
また、酸素に触れない為、好気性菌の増殖を防止することが可能です。
凍結含侵法にも活用
真空調理法は「凍結含侵法」という、専用の酵素を使用して食材を軟化させる調理方法にも応用することが出来ます。
デメリット…予算がかかる
真空調理法を実施するには器具を揃える必要があるので、その為の予算がかかってしまうというデメリットがあります。
食中毒、感染症対策
真空調理は低温調理と言われますが、加熱温度が低い場合、衛生面での問題が懸念されます。
例えばO-157発生防止の為にはHACCPに基づいて75℃以上、最低1分間は加熱する必要があります。
ノロウィルスが心配な場合は85℃以上の加熱が必要です。